タネはどうなる?!~種子法廃止と種苗法運用で

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著者 :
ryoichickさん  未設定  読み終わった 

・なんで読んだか?
師匠に借りた種子法廃止に関する本。農家だから知っておかないといけない。

・つぎはどうする?
あと数冊借りているのでそれを読む。種苗法があまりわかっていない気がする。

・めも
日本人にとってコメは農作物の中でも特別な意味を持つ。神に捧げる神聖な供物として、毎年天皇自らが行われる、収穫に感謝する新嘗祭(にいなめさい)や伊勢神宮の神嘗祭(かんなめさい)のコメは古代から御料地で栽培されてきた。

コメの花には1本の雄しべと雌しべがあるが、コメは開花と同時に自家受粉してしまう。農事試験場ではそれを避けるために、花が開花する直前にピンセットなどで雄しべを取り除いて、開花した後に交配したい品種の雄しべから受粉させて、新しい品種をつくる。そこから生まれた品種の中からさらに本当にいいものを数年から10年かけて、新しい種子として固定させる。

戦後、1952年に日本国民を飢えさせることのないよう、「主要農作物種子法」を制定した。自家受粉を続けると劣化することを理由に、コメ、麦、大豆の種子は国が管理して、都道府県が優良な品種の種子を増殖しコメ農家に安定供給させることを義務づけた。

種子法の廃止は2017年3月。当時の品種数は、都道府県の奨励品種の実数はうるち米で263、もち米で69、合計で332品種。延べ数にして712品種、民間育種の品種も入れればさらに数百なので、1,000を超える品種が栽培されていた。

種子法廃止と同時期に成立した、農業競争力強化支援法は2017年8月から施行されている。種子の集約をしようとしている。

ササニシキは宮城県で1963年に生まれ、多収性と食味のよさから普及していたが、1980年の冷害で大打撃を受けたことから、冷害に強い新品種の開発が進められた。1991年にひとめぼれができ、全国の作付面積でもコシヒカリに次ぐ第二位。

これまで種子法によって、各都道府県は農業試験場でその土地気候に適した優良品種を競って開発、奨励品種としてその種子の増産指導に当たってきた。(種子法第8条)種子法がなくなれば、その根拠が無くなってしまう。

種子法のもう一つの役割は、原原種を純粋なものとして次世代に残していくこと。種子は生きていて豆類のように次の年に播かないとどんどん発芽率が悪くなって劣化していくので、毎年生産する。250粒苗床に播いて、30日ほど経過した苗を1本ずつ手植えする。大きさ、色や形などを揃えるために手植えする。次は原種栽培をする。これも非常に手間や経費がかかる。民間に委託したがうまくいかずに、再度県で栽培するようになったこともある。(種子法第7条)

農水省からは従来どおりの予算措置をすると言われているが、数年後にはわからない。そもそも数年前から農業研究所の職員の補充はなくなっている。

自家採種しているコメ農家は1割ほど。自家採種して続けていると3年ほど経ったときに品質と収量が落ちるので、3年に1度は県の奨励品種の種子を購入している。

農水省が2017年11月に送った次官通知には、「都道府県がこれまで実施してきた業務すべてを直ちに取りやめることを求めているわけではない」とあるが、これはいずれやめないといけないことを指している。また、「種子の生産に関する知見を民間事業者に対して提供する」とある。民間とは、三井化学アグロ「みつひかり」、日本モンサント「とねのめぐみ」、住友化学「つくばSD」、豊田通商「しきゆたか」などで、価格が10倍もする。コシヒカリは400〜600円/kg、みつひかりは3,500〜4,000円/kgである。

1925年米国でタネの技術者が赤タマネギのタネの採取中に一つだけタネのないネギ坊主を見つけ出した。調べると雄性不稔種、動物でいえば無精子症であることがわかった。それを母親として他の赤タマネギの花粉を受粉させると、そこから生まれてくるタマネギは何代交配しても、すべてがタネのない赤タマネギ、雄性不稔種になることが明らかになった。ミトコンドリア内の遺伝子異常による。赤タマネギは甘く、サラダにすれば生でもおいしいが、収穫時の2ヶ月しか持たない。黄色のタマネギは乾燥させれば2,3年は持つ。この雄性不稔の赤タマネギを大量に栽培する。その横に1列黃タマネギを植えて、ミツバチに黃タマネギの花粉を受粉させれば、みずみずしい赤タマネギの特性と黄タマネギの長持ちする特性を持ったタマネギが栽培できる。こうして数千万株に1個しかない雄性不稔、いわば無精子症の突然変異体を見つけて、両方の特性を持つ一代雑種、F1 (First Filial Generation)を大量に生産できる技術を完成させた。
それから、ニンジン、トウモロコシ、キュウリ、ナスなどもF1になった。アブラナ科の野菜、白菜、キャベツ、ホウレンソウなども。例外的にF1になっていない野菜は、マメ科とキク科の作物で、エンドウ豆、インゲン豆、ソラ豆、ゴボウなど。サヤインゲンや春菊は雄性不稔が見つかって、じきにF1が売られ始める。

2007年ごろからミツバチに異常が起きていて、それはF1の種子による栽培が行われている地域だ。産卵数の少ない不妊症の女王蜂がいる。これは交尾のために数匹しか生まれない雄蜂たちが男性不妊、無精子症になっているのではないかと仮説する。
ヒトの男性の精子の数は、1940年代の平均1cc中に1億5,000万だったが、現在ではその1/4になっている。成人男性で精子の数が1,500万以下だと男性不妊となるが、成人の2割がそうだという。ラウンドアップに使われるグリホサートやネオニコチノイドが精子の数を減少させるという報告もある。
アスベストの被害も、ヒトに害を与えるとわかるのに40年もかかっていた。

F1の良さは、生育が早い、生育が揃う、形が揃う。流通に向いている。宮城県の農家ではビニールハウスでベビーリーフを年に12回収穫していた。
モンサントは遺伝子組み換えの種子の生産・販売だけでなく、F1のタネも生産・販売している。

「ゲノム編集は遺伝子組み換えではない」が、米国の農務省と日本の環境省の見解。遺伝子を切断しているだけで新たな遺伝子を組み合わせているわけではない、というのがモンサントの主張。EUでは司法裁判所が公式コメントで、ゲノム編集は遺伝子組み換えだとしている。日本では、世界で最も多い309種類の品種の遺伝子組み換え種子での商業用の栽培が認められている。米国でも認められているのは197種類だ。

UPOV条約とは1972年に大企業が品種の知的財産権を主張し始めたことによって締結された条約で1978年と1991年に改定されて現在に至っている。種子の登録制度を設けて、その種子をフォーマルな種子として政府が認め、無断で自家採種することも流通させることも禁止することができる条約である。

種苗法21条で自家採種の権利は認められているが、契約で別段の定めをした場合はこの限りではない。農林水産省の省令をもってして、その権利規定が適用されなくなる。つまり、農林水産省が認める例外(2017年に82から289種類に増えた)は、自家採種を禁止される。

申請に数十万かかり、登録には数百万から約一千万円かかる。年間登録料は6,000円から36,000円かかる。この育成者としての権利登録は個人にはできない。企業の利益につながるだけである。
政府がこれを推進する理由は、日本の良好な種子が海外に不正に流され、その地で栽培され、逆輸入することを防ぎたい。実際、畳の原料となるイグサの「ひのみどり」は2001年に熊本県が開発した優良品種だが、中国に持ち込まれ現地で増殖し、畳に加工されて日本に輸入され、熊本のイグサ農家を直撃すると懸念されている。しかし、この「ひのみどり」も当時から登録品種であった。それでも取り締まれなかったのに、国内の自家採種だけを禁止しても意味がない。国内法のため海外への適用もない。農水省に確認すると、これを認めていた。

ブータンの国立種子センター所長の話「日本は隣国である韓国や中国とのあいだで種子を盗まれたと争っているそうですが、ブータンはネパール、インドなど南アジア9カ国で種子条約を結んでいて、いずれの国で開発された種子も相互に自由に利用できるようになっている」

自家採種禁止の種子法に反したら、懲役10年以下、1千万円以下の罰金に処せられる。
種苗法違反は共謀罪の対象にもなっている。種の交換会に参加した人は全員が処罰を受けることになるが、準備行為も含まれるので、話に参加した人、そのために自分の採取した種子を準備した人などもすべて共謀罪で逮捕処罰されることになる。

日本も批准している「食料・農業植物遺伝資源条約」は、国連食糧農業機関(FAO)で法的拘束力を持つものとして決議された条約である。同第19条には小農民と農村で働く人々の権利として、自家採種の保存、利用、交換、販売する権利を認めている。農水省の見解としては、これは途上国の農民のことで日本の農民ではないとのこと。また、2017年に採択された「国連小農民と農村で働く人々の権利に関する宣言」について、日本は棄権した。反対はアメリカ、イギリスの2カ国で、賛成は34カ国。
国連では2019年から家族農業10年として、小規模農家、家族農業を主体とした農業のあり方について国際的な啓蒙活動に取り組むことになっている。アメリカ型の大規模、大型の農業の方法では、化学肥料と農薬を大量に消費して食料の増産につながらなかったことが、各種の統計で明らかにされたからだ。

2017年に閣議決定された種子法廃止の名目は、「国家戦略として農業の分野でも民間の活力を最大限活用しなければならない現代、民間による優秀な種子の利用を種子法が妨げているので廃止する」だが、古来からのコメではなく民間のコメを普及させるのはなぜか。そもそも国費で特定の民間企業の宣伝をしていいのか。民間のコメ品種も県の奨励品種になっている例もある。三井化学アグロの「みつひかり」は岡山県でも奨励品種である。TPP協定のために、公共サービス(学校教育、水道、下水道、医療、介護、種子法など)を民営化してアメリカなどの多国籍企業にビジネスとして開放することを約束している。日本のそれは70兆円規模になる。アメリカはTPPに反対しているのは、カナダ、メキシコとのNAFTAに懲りているから。自由貿易協定は多国籍企業と富裕層には莫大の利益をもたらすが、一般国民には実質賃金は下げられ、貧富の格差は極端に拡大した。安倍政権の官邸人事で農水省事務次官も退任され、この検討が進んだ。小泉進次郎が中心となりJA全中も解体された。

三井化学アグロのF1品種「みつひかり」はすでに全国で1,400ha栽培されている。栽培理由は、①多収だから→実際にはそれほどでもなくて肥料をふんだんに入れても足りていない。②全量買い取り→買い取り価格は企業の言いなりで例年下がるケースもある。③丈夫でつくりやすい→コンバインの刃が傷んでしまうケースあり。④穂のそろいがバラバラで青米が出る→種子法廃止とともにコメの検査制度もやめる方針なので問題なし。であり、味はそれほどでもなく、モンサントのビジネスモデル同様、調査員をあちこちに派遣する制度にしている。契約はなし。

モンサントの「とねのひかり」も、2017年だけで16,000ha栽培されている。契約は1ページ。
住友化学の「つくばSD」は、全量買い取りして、セブンイレブンに卸す。種子の販売は農薬や肥料とセットだが、推測するにコシヒカリの3倍ほどの価格の種子になっている。必要ない肥料も全量施肥しなければならず、水田によって異なる雑草が生えるのに指定された農薬をまかなければならない。契約は10ページ。災害時にエンドから訴訟を受けると生産者に責任が及ぶ。会社が独自に検査を行い、不合格の場合は生産者に負担がかかる。

豊田通商は「しきゆたか」で、茨城で収穫されたコメはカナダに輸出される。赤字になるが、国費で補填する。

茨城にある日本モンサントの実験圃場では遺伝子組み換えのコメの品種「カルロース」が栽培されている。コメの花粉は風によって1.5km先まで飛散して受粉することが確認されている。飼料用米について反収11俵ないと助成金を出さない方針になった。そうすると、F1品種や遺伝子組み換え品種を選ばざるを得なくなる可能性もある。アメリカでのモンサントも同様にヒトが食べるのではなく家畜が食べるものだとしてトウモロコシ、大豆から遺伝子組み換え作物を始めていた。日本も同じではないか。

世界的に見れば、遺伝子組み換え作物の栽培は減っている。ロシアでは遺伝子組み換え作物の輸入も一切禁止で、各国で減少傾向にある。除草剤耐性の作物の場合、いくらラウンドアップをまいてもスーパー雑草が次々に現れてくる。免疫をもつ新たな害虫や微生物が生まれている。農薬と化学肥料の大量施肥によって土壌も弱り収量も下がっている。一時的には増えるものの、結果的に増産はしないことが統計でもわかる。

遺伝子組み換え作物のBt毒素がアレルギーにつながっている恐れが高い。

アメリカでも減っている。Btコーンを餌に用いた豚は80%が妊娠しないか擬似妊娠で、Btコーンを与えないと治る。マウスの実験もメスのガン発生率が50〜80%。遺伝子組み換え作物を避けている妊婦の尿や母乳からグリホサートが検出された。インフルエンザやB型肝炎などのワクチンの効能を安定させるためのゼラチンが、豚のへその緒から生成されており、その豚の飼料に遺伝子組み換えトウモロコシが使われていた。

フランス、イタリア、オーストリアでは3年以内にグリホサート=ラウンドアップの使用が禁止されている。
ラウンドアップのグリホサートの害についてWHO傘下の国際ガン研究機構では発ガン性のある農薬としてA2のレベルで認められている。A段階ではタバコのように人体での試験結果が出ているもので、B段階が動物実験で明らかになったもの。

2017年12月にグリホサートの安全基準を最高400倍に緩和した。アメリカではグリホサートは大豆だけでなく小麦の収穫前にも乾燥の手間がいらないとして散布して収穫している。プレハーベスト。日本では日産化学が大豆にラウンドアップをプレハーベストすれば乾燥いらずとして宣伝しはじめた。これからは国産でも危ないかもしれない。

牛、豚、魚などもバイオテクノロジーが導入されはじめている。

各自治体で種子条例を制定し始めた。政府への意見書も出されている。

レビュー投稿日
2019年3月1日
読了日
2019年3月1日
本棚登録日
2019年3月1日
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