海に向かう足あと (1)

  • KADOKAWA (2017年2月2日発売)
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本棚登録 : 129
感想 : 27
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作中にも出てくる「渚にて」とまったく同様の印象を受けた。だらだらと続くたいして面白くもない日常の風景描写と、終末を受け入れた際の静かな絶望とが、何の希望もなく描かれる。それでもヨット好きにはもしかして面白いのだろうか?絵空事としか思えない三日月島のリゾートホテルの描写や、クルーの中に政府の研究機関で働く人がいたりする設定も受け入れ難く、途中ではさまってくるメール文章もわざとらしくて萎えてしまった。
「草原の実験」という映画があった。美しい日常と純粋な少女の心を唐突な核爆弾がすべて吹き飛ばしてしまうという衝撃的な映画であった。そこでは破滅の要素は匂わせ程度で、ほぼ全編が美しい映像で彩られていた。だからこその衝撃だった。
この小説はあまりに饒舌に危機を語りすぎている。なのに彼等は最後までヨットに対する興味しか持たず、危機に対する行動は何一つ起こしていない。それは単純に僕たち一般人の姿なのだろうけれど、無力を振りかざして諦念の感傷に浸るだけの小説に、世界を変える力はやはり無い。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年1月24日
読了日 : 2022年1月24日
本棚登録日 : 2022年1月24日

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