夢ノ町本通り―ブック・エッセイ―

  • 新潮社 (2023年9月29日発売)
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本棚登録 : 13
感想 : 2

<徴>

僕は読み終えた本をほとんど手元に置かない。たまたま手に入った希少価値のある本(例えばシーナ兄が初めて書いた本『クレジットとキャッシュレス社会』など)と,自分なりに「これだけは手元に置いておきたいなぁ」という本だけが,押し入れ奥の棚にわずかだけ在する。その中には沢木耕太郎の『深夜特急』もある。

本書 前半部の話題に ”大阪 天神橋筋商店街” にまつわるエピソードが出て来る。日本一長いアーケード商店街。 僕も何度か行った事がある。地下鉄南森町駅で降りて商店街通りからは西へちょっと外れた場所にある「D-45」というライブ酒場を年に一二回訪れる。一回は5月連休に北大阪 緑地公園野外音楽堂で催される『春一番音楽会』の観覧がてら。もう一回あるとしたら4月の初旬頃に神戸三宮の「東極楽寺」で催される『おはなまつり 音楽会』観覧の時。いずれも一泊しての音楽三昧という感じだ。

本編中盤は カシアスクレイ=モハメッドアリ の対戦記だけでお腹いっぱいに盛り上がっている。本書は過去30年に及ぶ「本」にまつわる沢木の長短エッセイを集めて並び変え一冊にして上梓したものらしいが,題名は『夢ノ町本通+モハメッドアリについて』に変えた方がいいんじゃないか,笑う。

開高健と竹中労の物言い を比較したエッセイがある。これぞまさに「歯に衣着せぬ発言」というやつで,一方の発言(ここでは 竹中労)に賛成する事で,他方(開高健)の発言を全否定していて,その内容と云うかテーマが「売春」に関わる事だったりするので,これはもう開高に喧嘩を売っているとしか思えない発言になっている。沢木にはこの様ないわば辛らつなエッセイが結構多い。なので面白いのだが。

後半に「本を編む」という章がある。何のことは無い,読んだ本の書評,読書感想文だ。そしてあろう事か かなりの部分でその本の荒筋を書き写している。もちろん沢木の書く文章だから読みごたえはあるが内容は読んだ本の要約である。沢木耕太郎でもこういう創作性のほとんど無い感想文を書くのだなぁ と思った。30年の間に書いた文章の中には注文主の要望に沿って書かざるを得なかったであろう こういう稚拙感想文だってあってもおかしくは無いのだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年11月17日
読了日 : 2023年11月17日
本棚登録日 : 2023年11月17日

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