プライド (角川文庫 と 8-4)

著者 :
  • KADOKAWA (2002年2月22日発売)
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本棚登録 : 61
感想 : 7
3

久しぶりに、藤堂さんの小説を読みました。
う~ん!
タイトル通り、女の「プライド」で彩られた小説。


物語は、36歳の女性と、彼女が買おうとした娼夫を中心に進んでいきます。
女性には同年代の恋人と、50代の恋人、二人の恋人がいます。
彼女の、男を手管に取っているのだという女の誇り、
年下の娼夫に、自分を見透かされているのではないかという恐怖、
娼夫の、バカを装っているように見える「賢さ」、
そんな娼夫の感情の揺らぎに影響される自分、
男を憎みたい、
男に手を差し伸べたい、
本当は自分こそが、その弱い内面を吐露して、
男に受け入れられたいのかもしれない。
そんな彼女の揺らぎ。
それらがとても繊細な文章で書かれています。


『胸に宿りかけた淡い怒りを払い落とすように、視線を夜空へ引き上げる。
端の欠けた、薄っぺらなシャンペン色の月がでていた。宇宙の神秘や巨大さに思いをいざなうような月ではなく、なぜかしら世俗のみみっちさを反映しているような月だった。
満月でも三日月でもない不鮮明な輪郭が、そのあいまいさが、そんな想像をかき立てるのかもしれない』


そう、曖昧さの中で、彼女も、娼夫に対する態度を決めあぐねています。
けれど最後まで突き通されているもの。
それがー


「プライド」


ラスト。
この言葉を口にすることは、一般的には「負け」かもしれません。
けれどこの小説の中では、
この言葉を口にすることで、
彼女は女としての矜持を保ったのです。
とても余韻のある結末でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説(国内)
感想投稿日 : 2012年9月28日
読了日 : 2012年9月28日
本棚登録日 : 2012年9月28日

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