2012年12月から2020年9月まで7年8カ月程度続いた第二次安倍政権期間中、自民党は選挙に勝ち続け、安倍元首相は、自民党内で総裁選を勝ち続けた。また、政権のガバナンス、特に官僚との関係で官邸の人事権を強化する等、他党に対して、自民党内で、また官僚に対して、安倍内閣は、「一強」の状態にあったと言えよう。本書は、その理由を、経緯を含めた探ったものである。
私は、やはり、選挙に強かったことが一番の原因だと考える。選挙に勝ち続けることにより、自民党内で強い求心力を持ち続けることが出来たこと、また、国会内で多数を握ることにより、自らの政策実行を進めることが出来たこと(ただし、「アベノミクス」を見て分かる通り、実行した政策が本当に効果の高いものだったかどうかは別問題であるが)等が、安倍政権が「一強」でいられた原因であろう。
では、なぜ、選挙で勝ち続けることが出来たのか。私は、野党がだらしがなかったことをあげたい。せっかく政権交代を実現しながら、自らの経験・実力不足により、短期間で国民から愛想をつかされたのが民主党であった。そして、政権を担っていた際の失敗を生かして、捲土重来を期す努力もせず、民主党は分裂を繰り返し、自民党に対抗する政党ではなくなってしまった。自民党が選挙に勝ち続けたのは、もちろん、安倍元首相の魅力もあったとは思うが、主には、野党の側のだらしなさに、私は原因を見る。
しかし、安倍元首相が退任したのは、2020年9月であり、まだ4年半前のことだ。
その間に、自公連立政権は衆議院で過半数割れをしてしまい、与野党の勢力図は大きく変わった。また、7月に予定されている参議院選挙では、その流れが続くことが予想されている。安倍元首相が退陣した時の「自民党一強」状態からは、現在の状況は予測が難しかったと言えるのではないだろうか。
菅・岸田・石破と、自分の考えを伝えることが下手な首相(自分の考えが何かあるという前提だけれども)が続き、ウクライナ戦争・円安からの輸入物価高騰からの消費者物価上昇と、それに収入がまったく追いつかない状態、政治と金の問題をめぐっての自民党の失態、そういったことが重なった結果であるが、政治の世界は、一度、風向きが変わると、なかなか取り戻せないものなのだな、と感じる。
そういう意味では、「安倍一強」「自民党一強」も、構造的な部分はあるものの、「風の吹き方」の結果でもあったのだろう、とあらためて感じる。
- 感想投稿日 : 2025年3月3日
- 読了日 : 2025年3月3日
- 本棚登録日 : 2025年2月17日
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