「青春の門」は物語自体も長いが、非常に長い期間をかけて書かれている小説である。1969年、というから今から50年以上前に「週刊現代」で連載が始まっている。1970年に「第1部筑豊編」の単行本が発行された後、1980年の「第6部再起編」までは定期的に単行本の形で発行がなされている。その後、発行のペースがゆっくりとなり、1993年に「第7部挑戦編」、2016年に「第8部風雲編」、そして、2017年からは第9部に相当する「新・青春の門」の連載が書かれ、2019年に「新青春の門第9部漂流編」の単行本が刊行された。ネットで見ると、作者の五木寛之は、第10部の構想をインタビューで話しており、少なくとももう少し話は続くようである。
私は高校生の頃に読んだ記憶がある。何部まで読んだかは忘れたが、少なくとも、この第1部の筑豊編、および、大学生活を始めた第2部自立編は読んだ記憶がある。今回、私の方も40年以上ぶりに読んでみた。
私は筑豊ではないが九州出身である。私の故郷の方言と筑豊方言は異なる部分も多いが、そんなには遠くなく、懐かしく読んだ。本筑豊編では、主人公の伊吹信介の父親や母親の世代の登場人物には劇的なことが起こるが、信介自体には特に劇的なことは起こらない。思い切りの良い性格をしている反面、普通の若者の限界を超えるような経験はしていないし、それが物語として語られるわけでもない。しかし、それはそれで、「普通の」若者である大部分の人間にとって、ある種の共感を感じる部分もある。
劇的な、手に汗握るようなストーリーではないので、すぐにでも続くを読みたい、という類の本ではないが、第2巻以降も、ゆっくりと読み続けていきたいな、と思わせる物語だ。
- 感想投稿日 : 2022年2月12日
- 読了日 : 2022年2月12日
- 本棚登録日 : 2022年2月9日
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