アメリカン・ブッダ (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
  • 早川書房 (2020年8月20日発売)
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本棚登録 : 182
感想 : 13
5

『雲南省スー族におけるVR技術の使用例』

 複数のSF小説傑作選的な本にも収録された(私も最初は『2010年代SF傑作選』で読んだ)短編。山奥の少数民族についての研究論文的なアプローチで、一生VRを嵌めたまま、VRの世界で生きる部族を描く。
 最初から最後まで結構私はぶるぶる衝撃に打ち震えながら読んだんだけど、一番ガーンと来たのが、村が停電になった時のエピソード。

『鏡石異譚』

 時間は前にだけすすむのか。マイナス方向に進むものがあるのじゃないか、それが宇宙の大半を満たしているけれど、人間は前に進む時間しか認識できないから「見えない」んじゃないのか……という話を、女の子の成長とタイムトラベルと、さらに民俗学に絡めて来てしかもストーリーが良いってどういうことだ!

『邪義の壁』

 これはホラーだった。
 最後の到達点からお話の最初をそおっと振り返ると、つぅんと恐さが鼻に抜ける。

『一八九七年:龍動幕の内』

 柴田さんは山田風太郎がお好きなんじゃないだろうか。私は山田風太郎大好きなので、そこまで「柴田さん面白いな」とは思っていたけれど、この話で「面白い→好き」になった。これは、性癖の話なので、個人差あるカモとは思う。でも、これ読んで、柴田さんの他の本も買いあさりスイッチ入った。この現象、数年前の野崎まど以来(あれ、宮内悠介さんと小川哲さんもあったよね……?)

『検疫官』

 ものがたりが疫病。この設定で展開していく世界が、検疫官の視点でするっと入って来る。この検疫官、「良い人」なのだ。だから、ラストが沁みる。本当に沁みる。最後の1文で、気持ちをすべて書き切ってあって、これも好き。

『アメリカン・ブッダ』

 柴田さんは仏教の布教をしたらいいと思う。経典はこの本で好いと思う。大乗よりもさらにたくさんの人が救える。超大乗ってことで、どう。
 スケールの大きさもカッコイイんだけど、Mアメリカとリアル世界の時間差の話がもっとも萌えた。

最後に、『そして、池澤春奈さんの後書きが面白い!』

 最初の『スー族』を電子で購入して、同時期に図書館で借りたSF傑作選に載ってたのにのけぞり、さらに図書館で借りたこの本にもあったけど、面白すぎてやっぱり自分で持ってたいと単行本購入。
 つまり、要約すると、私はこの本で柴田勝家にハマりました!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: SFは「少し不思議」で終わらない!
感想投稿日 : 2023年5月25日
読了日 : 2023年5月22日
本棚登録日 : 2023年5月22日

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