クオレ 愛の学校〈下〉 (偕成社文庫)

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レビュー : 9
サイトムさん 文学   読み終わった 

3月から7月までを収める。有名な「母をたずねて三千里」もここにはいっている。この物語もたいへん感動的な物語であるが、『クオレ』のテーマは「教育」であって、1886年に出版されたこの本は1870年に独立した「青年イタリア」の清新な息吹を感じられる作品である。この時代の小学生はみな同じ年齢ではないし、試験は市役所から送られてきて、先生ははらはらしながら、生徒の解答を見守っている。教育者は親切で、教育を生きがいとしており、教師に関わる感動的な話も多い。主人公エンリーコの父を教え、60年も教鞭をとった教師は、ずっと生徒の作文を保存しているし、病気になった先生の見舞いにエンリーコがいくと、「算数をするように」懇切丁寧に指導してくれたり、以前教えてくれた先生は身体を壊し、持ち物すべてを生徒に残して死んでゆく。また、この本ではエンリーコが家族に逆らったりすると、父・母・姉が手紙を書いてきて、諭してくれるし、同級生のなかには父母に手紙を書いている者もいる。
現代日本では不祥事ばかりがニュースバリューがあるために報道され、モンスター・ペアレントだの、不適格教師だの教育の現場が萎縮している観もなきにしもあらずであるが、ひらがなや九九を教えてくれた先生の骨折りを覚えている人もいるのではないかと思う。一人前になる前にどれだけの先生に会うものなのか数え切れないが、人間というのはやはり教師の影響をうけて、精神をはぐくんでいくものなのだという当然だか大切なことを思い出させてくれる本である。
また、家業をしながら学校に通ってくる子どもとか、DVをうけている子どもが学校から表彰されて父親が立ち直る話とか、子どもにもいろいろな背景があって、学校にかよってくるということも考えさせられるであろう。父母は一日二回子どものために学校へ送り迎えをしているし、くる病や盲学校、聾唖学校、兵隊や職人などが働いたあとに通ってくる夜学などの話もあって、とても感動的である。
 イタリアは「マンマ・ミーア」の国で、家族主義で中国や日本と似ている所がある。余談だが、宮崎駿の作品にはラテン系の人びとがでてくる。「ラピュタ」の海賊はイタリア系だし、「魔女の宅急便」はリスボンがモデルといわれているし、「紅の豚」や「風立ちぬ」ではイタリアがそのままでてくる。宮崎アニメの「なつかしさ」を支える要素にはラテンの家族主義もあるのであろう。

「金のあるものもないものも一つの家族にする学校、ばんざい!」である。

レビュー投稿日
2015年4月10日
読了日
2015年4月10日
本棚登録日
2015年4月10日
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