人間不平等起原論・社会契約論 (中公クラシックス)

  • 中央公論新社 (2005年6月10日発売)
3.44
  • (3)
  • (3)
  • (11)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 85
感想 : 5
3

「人間不平等起源論」は、性善説と自然主義が混じった思考実験であり、なかなか徹底している。注を読むとビュフォン『博物誌』が大きな影響を与えているのに気付く。人間が肉食動物か、草食動物かというあたりから、人間の本質について検討しているのだ。ほかにはコルディアックの言語起源論、オランウータンの生態を報告した旅行記などからも影響をうけている。『社会契約論』は、「自己保存」の社会契約によって結合した個人が、一般意志のもとで主権者となり、立法を行い、代理として政府をたて執行権をゆだねるというもの。民主制については、「これほど完璧な政体は人間には適さない」といっている。よく評価しているのは、選挙をともなう自然的な貴族政体であって、君主制がその下、世襲的貴族政体が最悪だそうだ。ローマの歴史はよく調べてあり、また、マキャベリやロビンソンクルーソーも引かれる。宗教にもケンカをうり、今のキリスト教は聖職者の宗教であり、人間の宗教にならねばならず、そもそも宗教は力をもつなともいう。一般意志がかなり怪しく、全体主義の起源と読めなくもないが、ルソーは理想と現実を双方おっているので、そうなってしまうのだろう。彼の人生はハチャメチャである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 哲学
感想投稿日 : 2011年8月11日
読了日 : 2011年8月11日
本棚登録日 : 2011年8月11日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする