「人間不平等起源論」は、性善説と自然主義が混じった思考実験であり、なかなか徹底している。注を読むとビュフォン『博物誌』が大きな影響を与えているのに気付く。人間が肉食動物か、草食動物かというあたりから、人間の本質について検討しているのだ。ほかにはコルディアックの言語起源論、オランウータンの生態を報告した旅行記などからも影響をうけている。『社会契約論』は、「自己保存」の社会契約によって結合した個人が、一般意志のもとで主権者となり、立法を行い、代理として政府をたて執行権をゆだねるというもの。民主制については、「これほど完璧な政体は人間には適さない」といっている。よく評価しているのは、選挙をともなう自然的な貴族政体であって、君主制がその下、世襲的貴族政体が最悪だそうだ。ローマの歴史はよく調べてあり、また、マキャベリやロビンソンクルーソーも引かれる。宗教にもケンカをうり、今のキリスト教は聖職者の宗教であり、人間の宗教にならねばならず、そもそも宗教は力をもつなともいう。一般意志がかなり怪しく、全体主義の起源と読めなくもないが、ルソーは理想と現実を双方おっているので、そうなってしまうのだろう。彼の人生はハチャメチャである。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
哲学
- 感想投稿日 : 2011年8月11日
- 読了日 : 2011年8月11日
- 本棚登録日 : 2011年8月11日
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