意識に直接与えられたものについての試論 (ちくま学芸文庫)

  • 筑摩書房 (2002年6月10日発売)
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感想 : 5
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『創造的進化』を読んでから、ベルクソンをもっと読みたくなり、手にとった。本書のテーマは「自由」である。結論としては個々人の進展(具体的持続)での決断や表現が「自由」であり、定義不能であることが説かれる。「自由」が生きられるものではなく、まるで心のもつ「事物」として扱われるのは、「時間を空間化」することに原因がある。天文学者が数百年といった時間の計算を紙の上で数分でやってしまうのは、時間を持続として捉えず、空間化し、その同時性のみを問題にしているからだ。科学は予見を目的にしているのだ。なぜ時間を空間化すると、自由が否定されるのかということが、偶然性・予見・因果性の観点からくわしく解剖されている。第一章で展開される、フェヒナーらの精神物理学の批判も非常に面白い。第二章では『創造的進化』にも取り上げられているように、ゼノンのパラドックスが検討されており、運動を無限分割可能な空間と対応させることにパラドックスの根源をみている。このパラドックスに常識に依拠して思考したところが、ベルクソン哲学の一つの源泉なのだろう。ベルクソンが主張する持続は、中国思想では「生生」にあたるだろう。このようなナマの世界にふれた思想は普遍的に見いだされる。デジタル隆盛の現代にあっては、忘れてはならない思想であろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 哲学
感想投稿日 : 2011年5月4日
読了日 : 2011年5月4日
本棚登録日 : 2011年5月4日

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