全日本食えばわかる図鑑 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社 (1989年4月20日発売)
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感想 : 21

 椎名誠の文体というのは、気持ちにぴったりと来るときには本当にぴったりと来て、まるで自分が感じていることがエコーとして戻ってきているようだ。軽薄饒舌体なのだけど、その饒舌の、言い過ぎるところのひとつひとつが気持ちよい。

 食べ物に関する文章である。だが、椎名氏のことだから、B級というよりC級食通である。が、たとえば醤油かけご飯とか、ソース焼きそばとかのはなしがおいしそうなことよ!気に入ったほうから2つあげるなら、ひとつは三段式海苔弁当であり、これの作り方の話は、作り方を読んでいるだけでしあわせになり、台所に走っていきたくなるのである。もうひとつは、味噌汁の具の話であり、氏はベストに大根を選ぶ。その通りである!と肩を組み合って歌いたくなるのだ。

 逆に、ダメな料理の話も小気味いい。基本的に権力とか飾りとか、建前のこびりついた食事はダメである。たとえば、ものすごい長い名前がついていて、でっかくていかにも「私はおしゃれなのよ」とニヤニヤした感じのお皿に、冗談みたいにちょこっとだけ盛られてくる「生スパゲティ」なんかである。ま、これは今僕が勝手に書いた例で、椎名氏の挙げるものは、もっともっとおもしろく腹立たしいのである。

 唯一残念なのは、モリソバの評価が低いことであるが、まあこれはもうひとつ落ちがあるので納得しておこう。
2009/9/21

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: エッセイ・対談など
感想投稿日 : 2010年9月23日
読了日 : 2009年9月21日
本棚登録日 : 2009年9月21日

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