スペンサーシリーズでないシリーズものを読むのは始めてである。その前に読んだ「虚空」をマンネリだと思った直後だっただけに、とても楽しく読むことができた。
女性の私立探偵が活躍する物語であるというのは、それだけでスペンサーシリーズを裏からみているような気がする。そこで語られるのが自立であり、人生の楽しみ方であり、要するにスペンサーと同じである。が、性別が変わるだけでずいぶん意味合いが変わってくる。主人公は料理が下手だなんてエピソードや、暗黒街の者達への対処の仕方など、どうしてもスペンサーと比べてしまうし、そのたびにニヤニヤしてしまうし、そうすることで性別の違いによって変わるものと、決して変わらないものが見えてくる。前者は楽しく読め、後者は感動的でさえある。
しかし、犯罪社会は男性社会なわけで、あれこれ言っていても、結局は男達に頼り、あるいは操ることによって目的を達している嫌いがないわけではない。もっとも、その裏付けとしてあるものや、そのための迷いや悩みが、スペンサーシリーズにはない読みどころなわけだけど。
物語そのものは、「儀式」や「初秋」と似ていて、特に金持ちで不和の両親から逃げ出した子供を、主人公の探偵が引き取り、何かを教えていく感じは「初秋」そのもの。性別が逆になったために、語るべき内容が変わってくるけど。スペンサーシリーズの良いとこ取りをしているようなストーリーだった。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
海外の小説
- 感想投稿日 : 2010年8月17日
- 読了日 : 2002年10月14日
- 本棚登録日 : 2002年10月14日
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