奇想小説とまではいかないまでも、ちょっぴり不思議な世界が描かれた7編が収録された短編集です。
短編集とはいえ1編1編がかなり短めで、1冊の合計が200ページ弱ぐらいしかありませんが、どれも繰り返し読みたくなるような密度の濃い作品ばかりが並んでいます。
いずれもいつの間にか非日常が日常を侵食する、といった趣ですが、著者は読者が「何となく納得できる」ところを突くのがとても上手いですね。村田沙耶香さんの解説にある通り、筋だけ聞くと荒唐無稽なように思えるのに、全体を読むと妙な納得感が残ります。
トップを飾るのはオフィス街の真ん中に造られた人工的なキャンプ場を舞台にした「大自然」。
本書中最小のページ数ながら、これが一番難解で、かつ読みごたえがありました。作中の「きもちわるいもの」の意味するところも興味深いですが、中盤で指導員が語った内容とラスト数行がリンクしている点が面白いです。
でも最初がこれだと挫折する人もいるだろうなあ・・・。
ストーカーを描いた2編目の「去勢」からは割と分かりやすくなるので、投げ出さずに読んでみて欲しいです。
収録作はどれも面白いですが、アクション俳優について語るうちにビルの屋上から戻れなくなった男女を描いた「プファイフェンベルガー」や、赤ずきんをモチーフにした「狼」、殺人鬼との生涯を通した戦いを描いた表題作「ファイナルガール」が特に印象に残りました。
デビュー作『いやしい鳥』の感想で「『世にも奇妙な物語』っぽい雰囲気」と書きましたが、本作もまさにそうでした。
もっと読みたい。
- 感想投稿日 : 2019年8月18日
- 読了日 : 2019年8月18日
- 本棚登録日 : 2019年8月18日
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