ほんとうの花を見せにきた

著者 :
  • 文藝春秋 (2014年9月26日発売)
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感想 : 143
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バンブー話3編。やはり「ちいさな焦げた顔」がとにかくそそられた。長い間二人暮らしだったバンブーのムスタァと洋治の、お互いの衣服や髪などを整える仕草。たまらない。それにひたすらムスタァを慕う人間の男の子が加わって、冷たかった生活に火が入る。人であれば当たり前の成長や変化に、ムスタァ達が一々感動するのが、可愛らしく切ない。この終盤もほんともう・・・。「ほんとうの~」は女の子達。茉莉花凶暴だけどピュアで、人には害ある者だけど、憎めなくて。最後の描写がまたきれい。
「あなたが未来の国へ行く」はバンブー族と人との決定的な別離で前2編の過去。名前出てこないけどちらっと出てくる詩集持ってるの洋治ですな。この時点で「全てを受け入れよう」とすでに決意している、この冷め方。終盤の、姉が弟を未来へと押し出す、その命がけの叫び。
3編通して、バンブーと人の関わり、バンブー同士の関わりが、とにかく良い。不老で人よりずっと強いのに、人の持つ生命の火に引き寄せられるムスタァと洋治。自分を守り、慕い、信頼してくれた親友を殺してからの、百年の孤独を生きた茉莉花の、最期のほんとうの花。生まれた意味を、役に立ちたいという心からの願いを、ちいさな弟に託した姉。この頼りない末っ子王子が、最初の「ちいさな~」でああなる、と・・・。 そういえばやたら姉と弟、というキーワードがあったな。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ファンタジー
感想投稿日 : 2015年4月2日
読了日 : 2015年4月2日
本棚登録日 : 2015年4月2日

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