インシテミル (文春文庫)

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レビュー : 1452
著者 :
放浪者さん 推理小説(日本)   読み終わった 

時給十一万超の実験モニターに応募した人々が《暗鬼館》という舞台で殺人ゲームを繰り広げる……本格ミステリを主題にしたデスゲーム小説。2010年に『リング』の中田秀夫監督によって映画されているので、タイトルを耳にしたことがある人も多いはず。映画版は主演の藤原竜也を意識してか、前年に公開され大ヒットした『カイジ 人生逆転ゲーム』を彷彿させるようなエンタメ作品(キャッチコピーは《究極の心理戦!》)となっており、原作の魅力であるミステリよりもデスゲーム要素を強調していた印象。残念ながら、実写のほうはあまり評判もよろしくない。
だが、小説では「厳密なルールが定められた空間での殺人劇」という設定が非常にうまく練り上げられており、キャラクター造形の巧みも相まって一級のエンタメ作品となっている。恐怖・殺人・疑心暗鬼といったファクターが物語の核となるミステリとデスゲーム的世界の親和性は高く、飽きることなく読み進めることができた。
この作品ではゲームの参加者全員に一つずつ「凶器」が配布されることで、謎解きに新たな要素が与えられている。作中に登場する凶器が一つであれば、読者(探偵)は通常フーダニットを追求するが、本作の環境下では必然的に「誰の凶器を使って?」という、いわば《フーズダニット》に焦点が当てられることになる。Aという凶器を用いて犯行が行われたが、その凶器を所持しているのはBという人物……しかし、Cが凶器をすり替えた可能性はないだろうか? といった具合である。お馴染みの密室やアリバイトリックは出てこないが、こういった斬新な謎が提示されるのは嬉しい。
もちろん、推理小説に興味がなくともサバイバルゲーム的な読み方で楽しむこともできる。新本格以降の作品によくある「騙される快感」はやや物足りないが、それでも十分お勧めしたい一作だ。

レビュー投稿日
2018年8月20日
読了日
2018年8月20日
本棚登録日
2018年8月17日
2
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