六〇年代後半から七〇年代の京都を知るものにとっては、懐かしく、心に響く連作小説。やはり京都は特殊な街だ。平安時代から営々と続く都、歴史ある日本の心、伝統文化を今なお守り続ける街であると同時に、古い町でありながら新しいもの、若者をも受け入れる懐の深さがあるのだ。
大学生活を京都で過ごし、今もよく行く街である。その時の流れの中で私は京都はそれほどかわっていないと思っていた。しかしこの作品の中に表現される60〜70年代の京都はゆったりとした時の流れを感じさせ、「現代へと続く時」というより、「戦後から続く60〜70年代」と実感出来る。やはり京都も大きく変わっているのだ。古さと若者が関わったときに生じる伝統、因習との軋轢を表現し、大きく変わろうとする当時の京都を作品にしているのかもしれない。
京都の四カ所を舞台にしているが、どこも実在の場所でそのあたりに行ったこともあり、街の雰囲気もわかる。青春時代を振り返りながら、懐かしさと京都の奥深さを感じた小説だ。
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- 感想投稿日 : 2015年4月6日
- 読了日 : 2015年4月6日
- 本棚登録日 : 2015年4月6日
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