語りなおしシェイクスピア 1 テンペスト 獄中シェイクスピア劇団

  • 集英社 (2020年9月4日発売)
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感想 : 36

2020.11.29市立図書館
このところなにかと話題のマーガレット・アトウッド、私にとっての出会いの一冊はシェイクスピア語りなおしシリーズのこれになった。
刑務所の更生プログラムの一環としてシェイクスピアを上演するという物語の中に「テンペスト」がまるごと何重にも織り込まれた快作。主人公の人生を経糸に、演劇界や刑務所の裏話などを横糸、スパイスとして現代を写すアトウッド版「テンペスト」は演出家と役者・スタッフによる台本分析・研究から配役を決め稽古して上演に至るまで伴走し、さらに上演後の「登場人物その後」レポート発表会で参加者たちの得たものを共有できる趣向なので、演劇オタクでもそうじゃなくても、この芝居ひいてはシェイクスピアがよくわかるようになっておもしろい。さらに、この芝居が作られた当時も多分そうであったはずの現実世界への批評もしっかりもりこまれていて、シェイクスピア劇を見ながら両極化し分断が深まる「いま」をかんがえることができる。この入れ子のような牢獄から解放される日はくるのだろうか。このままシェイクスピア沼そしてアドウッド沼に引きずりこまれそう。

脳内上演が最善なのだろうけれど、いつか「天保十二年のシェイクスピア」(井上ひさし)のように実際に上演される日が来てほしいと期待している。今年であった双璧のシェイクスピアへのオマージュとして記憶に残ると思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2020年11月29日
読了日 : 2020年12月12日
本棚登録日 : 2020年11月29日

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