アフロ記者が記者として書いてきたこと。退職したからこそ書けたこと。

著者 :
  • 朝日新聞出版 (2016年6月20日発売)
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感想 : 3
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稲垣えみ子さんの朝日新聞退社本は2冊出ていて、「魂の退社」に続きこの本も読みました。

こちらも面白かった。
朝日新聞時代に書いた文章がたくさん載っていて、読んだことのあるのも多かった。
ただ、わたしが注目したのは他の多くの読者と同じく、反響が大きかったという節電のコラム以降なので、それ以前の橋下さんの記事とか、あるいはマスコミ向け刊行物に載ったものなどは当然読んだことがなく、それらも興味深く読んだ。

印象的な文章はたくさんあれど、一番心に残ったのは次の2点。
一つは朝日新聞の読者が、稲垣さんの思っていたのとはまったく違っていたというお話。
P124
「結果は思ってもみないものだった。
30人中26人が「君が代条例に賛成」。当たり前のルールを守れない人が先生をしていること自体おかしいという。
ショックだった。正直、6~7割が「反対」と答えると思っていた。良心的な日本人にとって、国内外に大きな犠牲をもたらした戦争の記憶とつながる国旗・国歌の強制は根源的に受け入れられないものと信じていた。
その人たちこそ朝日新聞の読者だと思っていた。
だがそんな人たちは、もはや1割しかいないのだ。良心的な世論をリードしているつもりが、振り返ってみたら誰もいなかったのである。私が想定していた読者像は、自分たちに都合のいい甘いものだった。本当に想定しなくてはいけない読者は、朝日新聞的リベラルな主張を、ウソっぽい、あるいは嫌いだと感じている、世の中の9割の人だった。」

ひー。わたしのようなリベラル派は世の中の1割なのか。。

もう一つはやはり節電、脱電化製品のお話。
チューブにつながれていた人間が一つずつ外して自由になり、自分の足で歩き始めるという例えが載っている。ああ、なるほどなー、さすがうまいなーと思う。
しかしタイムリーなことに、毎日観ている「とと姉ちゃん」が今、家電がいかに主婦を家事から解放し、自由な時間を与えているかということを力説しているものだから、頭の中が、真逆の価値観でせめぎ合って大変なことに(笑)。

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感想投稿日 : 2016年9月18日
本棚登録日 : 2016年9月13日

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