街路樹の樹冠がつくる緑陰が都市の環境にどれほど大切か、また剪定の方法によってどれほど樹形の形成に差が出てくるかということを認識させられた。
街路樹は道路に植えられている以上、建築限界や車高制限高に基づく空間を確保するために枝ぶりを制約する必要があることは紛れもない事実である。
しかし、日本における街路樹の剪定は、そのような基準を超えて、落ち葉によるクレームや剪定回数を減らすために過度に強剪定に頼った管理がなされているという。
豊かな樹冠を作っていくためには10年以上にわたる一貫した管理により、木の上部の枝張りを形成していくとともに、それに対応した根の育成をする必要がある。田園調布や仙台市などの事例では、行政に専門職の職員を設けるとともに自治会など地域との連携を図りながら、剪定などの中長期的な管理と日常の管理をうまく行っているようである。
街路樹は都市の景観、地域の顔を形成する重要な要素であり、街路樹がどのような姿であるかは、行政のみならずその地域のコミュニティの連携の強さも示す一つの指標なのではないかと感じる。
ただ植えられているだけではなく、都市の温熱環境の改善から交通事故の抑止、生物多様性の確保まで様々な効用のある街路樹について、道路管理者だけに任せるのではなく、地域として守ろ育てていく姿勢が大切であるということを考えさせられる本だった。
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- 感想投稿日 : 2024年2月4日
- 読了日 : 2024年2月4日
- 本棚登録日 : 2024年1月31日
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