遠藤周作の短編集。戦時下から戦後くらいの時代設定でいろいろな話が収められているのだが、どれも男主人公が疲れ切っていて暗く息苦しい。人間の醜さ、弱さ、暴力性などを深い諦念とともに見守るような感覚だ。前の作品もそうだったが、フランス留学生の話が出てきたり、小説家である主人公に滔々と物語る老人が出てきたりとところどころに作者の体験をうかがわせる描写があり、その苦悩を読むにつけ遠藤周作の人間に向き合うことへの真面目さ、誠実さが分かってきた気がする。
文章はにおいや情景が浮かんでくるようでどっしりとしていながら読みやすく、はっとするような美しさもある。凄みを感じるのだが、一気に読むとちょっと疲れた。でも本当に、すごい短編集。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2025年4月14日
- 読了日 : 2025年4月14日
- 本棚登録日 : 2025年4月14日
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