まるで自分がカウンセリングを受けているかのような読書体験ができる本。「心の補助線」という比喩が大変分かりやすい。また、最後の第7章では、メラニー・クラインの言うところの、妄想分裂ポジションから抑うつポジションへと至る移行のプロセスが、エピソード仕立てで臨場感豊かに描かれており、とても腑に落ちた。そして、本書の最後で著者が擁護する「も」の思想とは、対象関係論が重視する「喪」の仕事であり、「も」の仕事でもあったことに気づく。

2025年3月28日

読書状況 読み終わった [2025年3月28日]

理系脳と文系ごころを同時にくすぐる一冊。理系脳を刺激するのは、第5章「郵便的マルチチュードへ」。誤配という鍵概念が、数学の証明を思わせる鮮やかな論理性で解説されている。文系ごころを掻き立てるのは、第8章「ドストエフスキーの最後の主体」。ドストエフスキーの長編作品群を貫く縦のつながりに着目した著者の読みに、なるほどと思った。同章で提示されるドストエフスキー作品の主人公の変遷は、人間としての成長を考える上で、大変プラグマティックである。

2025年3月28日

読書状況 読み終わった [2025年3月28日]

令和に蘇った河合隼雄『こころの処方箋』。ユーモアあふれる筆致で毎回笑わせてくれるからといって侮るなかれ。軽妙な語り口の裏に忍ばせてある著者の学知の深さよ!また、週刊誌連載が基になった本だけに、一編一編のエッセイには直接の関連性がないが、読み終えて全体を振り返ると、コンステレーション(またしても河合隼雄登場!)が見えてくる。目次に季節が振られているのも絵巻物のようでおしゃれ。私のお気に入り回は「中学受験の神様」

2025年3月28日

読書状況 読み終わった [2025年3月28日]

普段、読書はもっぱら己のスノビッシュな欲望を満たすためにする私だが、本書は一味違った。ページを繰る手が止まらず、時間を忘れて「読書のための読書」に没頭するという貴重な体験をくれた一冊だった。【家族】は、私たちが認識する対象ではなく、むしろ認識の枠組みそのものである。そして、【家族】は一面では堅苦しくあるものの、他方では柔軟さも併せ持つ。その柔軟さを活かすことこそ、人生を生きる上で重要なヒントとなるはずだ。

2025年3月28日

読書状況 読み終わった [2025年3月28日]
ツイートする