何かの小説で主人公(年少)が「クオレ(愛の学校、だったかも)」を読んでいて親に、そんな子供の読むような物を、というようなニュアンスで見とがめられるシーンがあって、他にも小説で名前を目にしたんだよね。それでずっと惹かれていた。少年達を主人公におく小説というのは、輝くような子供という時代の戸惑うほどの暗部というのがミソだと思うし、それも好きだ。でもこの「クオレ」は、違う。教師を父を尊敬し、真の勇気を持つ友を心から慕い、嫌な奴とは路上で喧嘩する。子供時代の真の良心。それでいて少年世界がなんとも魅力的で、挟まれる訓話には大泣きしてしまった。「母を訪ねて三千里」ってこんな胸に突き刺さる話だったのかと初めて知ったし、「フィレンツェの少年筆耕」なんか、早起きする前の晩には読んではいけませんよ。少年自身の語りで、短い日記が月別に分けられているのが、学校の一年を体感出来てまたいいよね。訳もこの杉浦明平という人のが格好がいい。年少の子が読むなら別として。この河出書房新社の「世界文学の玉手箱」シリーズというのは、大人が名作児童文学を読むのがコンセプトのようで、既に絶版になっている。文庫ながら花布が付いていたりいちいち装幀が可愛く、文字に色づけがされていたりと(「クオレ」は緑色)、コレクションさせるのも目的だったようだ。帯には「大人の私は、ただいま留守です。」の文字!「世界文学の玉手箱」シリーズは、古本屋でちょっと探したい、おすすめの可愛い文庫だ。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
少年の街角
- 感想投稿日 : 2009年2月1日
- 読了日 : 2009年2月1日
- 本棚登録日 : 2009年2月1日
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