反骨のジャーナリスト (岩波新書)

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本棚登録 : 76
レビュー : 12
著者 :
sasha89さん 評伝   読み終わった 

反軍を貫いた桐生悠々、「過激にして愛嬌あり」の宮武外骨は今更
語るまでもないだろう。

本書での異色の扱いは「青鞜」を創刊した平塚らいてうや、関東大震災後の
どさくさに紛れ憲兵隊に殺害された大杉栄、先の戦時下でのゾルゲ事件に
連座して処刑された尾崎秀美を言論人として取り上げているところか。

最も注目すべきは尾崎秀美だ。戦時下の有事立法として4年7ヶ月しか存在
しなかった「国防保安法」により、有罪とされ、死刑宣告の法廷で裁判長は
尾崎に対し「いのちをもって国民にわびよ」と言い渡した。

「横浜事件」同様、戦時下という異常な体制下とは言え、司法さえも狂っている
ではないか。

人が、命を賭して物を書いた時代があった。現在とは比べることも出来ぬ
メディア規制の時代があった。権力が、固定観念が、大手を振るっていた時代、
多勢に反旗を翻し、ペンという武器を手放すことをしなかった人たちがいた。

「将来の(現在でも決して早くはない)新聞記者は創造的作者であれねばなら
ない。六十歳の、又これよりも、もっと年取ったものの言に聴いて、神秘主義を
尊奉するに至っては、その存在理由を失うのは明である。見よ、彼等は既に
その存在理由を失わんとしつつある。試みに街頭に出て、民衆の言うところを
聞け、彼等は殆んど挙げて今日の新聞紙を無用視しつつあるではないか。」

桐生悠々の絶筆となった一文である。現在のジャーナリストこそ、この一文を
心に刻むべきではないか。良書だが、どうやら絶版らしい。残念だ。

尚、我が亡き恩師は世間では「反骨のジャーナリスト」と言われていたが、
我々不肖の教え子たちはその風貌から「骸骨のジャーナリスト」と呼ばわって
いたことは内緒である。

レビュー投稿日
2010年2月21日
読了日
2010年2月21日
本棚登録日
2010年2月21日
2
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