城の中 (中公文庫)

著者 :
  • 中央公論新社 (2014年5月23日発売)
4.33
  • (1)
  • (2)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 19
感想 : 1
5

「「スケマサとお読みですか」なんて聞いてくれる人がある。私は
こういう学のある人は好きで、こういう人には目をかけることにし
ている。アイマサなんて読むヤツには、ろくなのはいないはずなん
だから」

す、すいません。入江侍従長のことは存じてましたが、下のお名前
の読み方までは分からず、「アイマサ…かな?」と思っていた、
若かりし頃の私は確かにろくでもないです。あ、今はきちんと
「スケマサ」と読めますけど、ろくでもないところは変わって
いませんが。

学習院の先生から昭和天皇の侍従・侍従長を務めた入江氏のエッセイ
集である。『侍従とパイプ』に次ぐ2作目だったと思う。

冷泉家の流れを汲むお公家さんの出身なのに、東京生まれ・東京育ち
のせいかかなりのガラッパチ。ただ、それが下品にならないのは
やはり育った環境なのかもしれない。

筆致もユーモアに溢れ、城の中=皇居(江戸城)の四季折々の風景、
昭和天皇のご研究や行幸にまつわるエピソードが記されている。

ほとんどの作品が昭和30年代に雑誌などに発表されたものだが、
既にその年代で、明治生まれの入江氏は東京の街が風情を失った
ことを嘆いている。

昭和生まれの私だって昨今の都内のそこかしこで行われている
再開発によって、どこでも巨大な複合商業施設を中心にした
街並みになって無機質化が進んだように思うものな。

古典文学に通じ、能や謡を愛したことが数々の作品から伝わって
来る。

敗戦直後に行われた昭和天皇の巡行にも多く同行され、陛下が国民の
なかに入って行かれるお姿に喜んでいるのは、入江氏が「開かれた
皇室」を目指していたからだろうな。

こんな点で、一部の人から入江氏は今でも敵視されているらしいが。

尚、「〇〇であります」の「あります」は入江氏曰く長州方言なの
だそうで、「こんな田舎言葉なんかむねくそわるい」のだそうだ。

私の手元にあるのは昭和53年の文庫版で、生憎と表紙カバーが失われ
ている。多分、どこかの古書店のワゴンセールで購入したんだろう。
2014年に改版が発行されているので、買い直すか考え中である。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2018年5月8日
読了日 : 2018年5月8日
本棚登録日 : 2018年5月8日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする