砂漠の戦争―イラクを駆け抜けた友、奥克彦へ

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著者 :
sasha89さん  未設定  読み終わった 

2003年11月29日。イラク北部の町で、日本の外務省職員ふたりの
乗った車が銃撃された。乗っていたのは奥克彦参事官と井ノ上正盛
書記官。運転していたのはイラクの日本大使館に25年間務めていた
イラク人運転手。

イラク戦争後、イラクの復興支援の為に派遣されたふたりは、
イラクの人々にとって何が必要なのかを考え、イラク中を奔走
していた。その最中の死であった。

本書は小泉政権当時、首相補佐官であり奥氏とも親交のあった
著者による国際支援の在り方を考える書だ。

中盤からは著者が考える支援の在り方、自衛隊の海外派遣に
対する考え方が記されているが、前半と後半に現場で懸命に
働いた愛すべき日本人外交官の仕事振りと人柄が綴られている。

真に惜しい人だった。戦争をおっぱじめたアメリカの本音なんて
関係ない。フセイン政権の下で怯えて暮らし、多国籍軍の空爆に
晒され、何もかも失った人たちに対し、最優先事項は何かを見極め
る目と心を持った人だった。

アメリカの意向に逆らったこともある。それが一因なのだろう。奥氏の
死については謀殺説さえあるくらいだ。

上司とはどんなにやりあっても、部下に対しては声を荒げることの
なかった人だったという。誰にでも笑顔で接し、煩雑な手続きにも
ほぼ苛立ちを見せることもない。奥氏のような人こそ、日本の国際
支援を支える人だったのになぁ。

元首相補佐官という立場の著者なので、全面的に賛同出来ない
部分はあるが奥氏の人物像を描いた部分は満点である。

「(前略)あんたはテロと言うが、これはテロとかゲリラの範囲を
超えて、アラブのアメリカに対するレジスタンスになってんじゃない
かと、この点だ。背景にパレスチナ問題に対するアメリカのダブル
スタンダードへの反感が間違いなくある。それだけに自衛隊派遣
は面倒なことになるんじゃありませんか。レジスタンスならそのほう
に正義があると、人は思うよ。そういうところに日本を追い込むのは
まずいよ。
(中略)あんたたち、戦(いくさ)をやったことがあるんですか」

自衛隊のイラク派遣について著者と話した時の、後藤田正晴の
言葉だ。奥氏とは直接関係はないが、自衛隊を都合よく使おうと
している政治家センセイに読んで欲しいね。特に最後の一文は。

レビュー投稿日
2017年8月19日
読了日
2013年9月5日
本棚登録日
2017年8月19日
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