戦場が見える島・沖縄 —50年間の取材から

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  • 新日本出版社 (2015年9月19日発売)
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4

どこで目にしたのかは忘れたが、画像は今でも脳裏に焼き付いている。
道路に倒れた少女と、その少女を取り囲み見下ろす米兵たち。

「少女轢死」。本土復帰前の沖縄で、わずか6歳の少女は在沖米軍の
車両にひき殺された。撮影したのは本書の著者である嬉野京子氏だ。

アメリカ占領下の沖縄で、米軍が起こした事故の現場を撮影するのは
文字通り命がけだった。嬉野氏が命がけでカメラを構えてくれたから
こそ、「少女轢死」の写真は今に残っている。

本土復帰以前の1860年代から沖縄を訪れ、米軍基地と沖縄をレンズ
を通して見つめ続けて来た著者の、50年に渡る取材の記録である。

明治政府による琉球併合から、沖縄はずっと日本であって日本では
ない場所だったのではないか。敗戦後、長く施政権がアメリカにあった
こともそうだが、日本政府でさえも現在でも沖縄を「日本国」という括り
から閉め出いしていないだろうか。

本書に掲載されている嬉野氏の写真を見ながら思う。先の大戦中に
唯一、地上戦の行われた沖縄。アメリカ軍の上陸と共に人々は収容所
へ入れられ、解放されたら自分たちの土地は強制的に接収されて
アメリカ軍の基地になっていた。

そうして、繰り返される事件と事故。本土復直前の1970年に起きた
コザ騒動は、それまで我慢に我慢を重ねて来た沖縄の人々の怒り
の爆発だった。

それでも時の佐藤首相は沖縄返還に悪影響を与えるとは言ったが、
何故、騒動がこれほど大きくなったのかや沖縄の人々の心情を理解
することはしなかった。

戦後70年が過ぎても、沖縄は今でも闘っている。アメリカと日本政府を
相手に。

高校生の頃、思ったことがある。修学旅行は九州の観光地巡りだった。
そんなことより、沖縄に行きたい…と。でも、未だ行けてないんだけれど
ね、沖縄には。行かなきゃいけないんだけど。

本書は嬉野氏の取材の集大成になるのだろうな。ページ数こそ多くは
ないが、本土復帰運動から普天間基地移転問題までをカバーし、掲載
されている写真で沖縄が辿って来た歴史も分かる。

なかでもヴェトナム戦争時、沖縄からヴェトナムに送られ除隊後に心を
病み、ヴェトナムでの体験を綴った『ネルソンさん、あなたは人を殺しま
したか』の著者である元米兵アレン・ネルソン氏との交流は切ない。

沖縄の人たちすべてが基地反対派だとは思っていない。賛成派もいる
ことは知っている。それでも、米軍基地があることで何が起きていたの
か・何が起きているのかは、知っておきたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年8月23日
読了日 : 2016年6月3日
本棚登録日 : 2017年8月23日

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