米が多発する経済制裁について、近年の動向を中心に分析した良書。まとまった形の解説は貴重で、体系的に理解できた。
9.11を機に米国の経済制裁は貿易制裁から金融制裁に大きくシフトし、しかもその範囲が広がる。それまで米の安全保障政策で財務省の影は薄かったのに、今や「仕事の半分は安全保障と制裁関連」(ムニューシン財務長官)とのことだ。
問題点は、各級政府による恣意的にも見える運用や罰金取り立て、冤罪の危険。そして何より、米当局者には国外適用との認識がないまま実質的に国外適用されていること。米ドルや米国中心の国際金融システムを利用する限りはその網にかかってしまう。主権よりもテロ対策のような普遍的な国際正義が重視される流れも背景にあるという。他国政府も以前より抗議しにくく、米の制裁をずるずる受け入れるようになっている。
著者とて、制裁が効果を見せていない例を挙げつつも完全に否定するわけでもない。ただ著者は、現在のような制裁の乱発は基軸通貨ドルや米の国際金融システムを衰退させる危険を最後に指摘する。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
米国
- 感想投稿日 : 2020年3月22日
- 読了日 : 2020年3月22日
- 本棚登録日 : 2020年3月22日
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