叢書「東アジアの近現代史」 第1巻 清朝の興亡と中華のゆくえ 朝鮮出兵から日露戦争へ (叢書東アジアの近現代史)
- 講談社 (2017年3月22日発売)
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清朝の通史だが、教科書的に個々の事件や発生年を追うというより、世の中がどう変動したかという流れを重視している。また、「辺境」が清の版図に入ったり「属国」関係を結んだりまた離れたり、という点にも多目に紙幅を割いている。全体としては語り口は柔らかく、また筆者の過去の著作と重なる部分も少なくなく、読みやすい。
筆者は、「盛世」を誇ったはずの乾隆帝及びその治世に対してやや手厳しい。満洲人の漢人への同化と言えば単純だが、筆者はそれを、それまでの清朝は自らを「外夷」と自覚し、旧来の「華」「夷」二分法的な秩序原理を克服していたのに、乾隆時代に旧態依然の「華」「夷」二分法に回帰してしまったと言い換えている。
18世紀に入ってからの人口増加と流動化、既存の社会秩序から逸脱した移民たちの秘密結社。そうなると皇帝の独裁にも限界が来て、地方大官の権限を大きくせざるを得ない「督憮重権」。19世紀の大変動の下地は既に18世紀に準備されていたということだろう。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
中国
- 感想投稿日 : 2018年2月26日
- 読了日 : 2018年2月26日
- 本棚登録日 : 2018年2月26日
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