日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実 (中公新書)

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本棚登録 : 632
レビュー : 62
著者 :
satsukiさん 日本   読み終わった 

 イデオロギー色がないわけではないが濃くはない。軍医や衛生兵の証言を多く引用するなど、研究者の本らしく抑え目の表現ながら生々しい。死者の9割が1944年以降で、戦病死者や餓死者、自殺者数が戦闘の死者数を上回るという数々の推定。硫黄島の戦いでも戦闘の死者は3割のみとの証言。栄養や補給、工業化なども含めた総合国力が軍の強さでもあり、日本軍はこの点で明らかに弱かった様子が分かる。消耗戦を戦い抜くだけの国力はないとの「強い自覚」は軍にもあったと著者も書いているのに。
 著者は、国力を超えた戦線の拡大や戦争終結の意思決定の遅れの背景として、明治憲法体制の欠陥である「統帥権の独立」と「国家諸機関の分立制」を挙げている。しかし、両者は矛盾する面もあるかと思う。前者だけなら「軍部(=軍令)の暴走」と単純化すればよいが、実際には内閣や大政翼賛会など他のプレーヤーも戦争の過程にいた。また後者に重点を置けば、軍部の暴走というよりも、むしろ国家のどの機関も決定的な力を持たなかったことが欠陥だったのではないか。
 なお、男子人口に占める軍人の割合は同時代のドイツよりもずっと低く、この隘路に対し、植民地出身者や当時の欧米で行われていた女性の軍事動員は消極的で、その分少年兵を重視したという。

レビュー投稿日
2018年8月9日
読了日
2018年8月9日
本棚登録日
2018年8月9日
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