タイトルから筆者の他の著作にもある清末期の歴史本かと思っていたが、実際はより長い期間の社会経済史とでも呼ぶべきものだった。
筆者は、国庫がない、「『官』『民』の乖離・政府権力の民間経済への不干渉」という特質を持つ「伝統経済」「『地域』経済」が明清期以降続いてきたとした上で、アヘン戦争後の「西洋の衝撃」でも基本的には変わらず、大きな転機は日清戦争だったと述べている。社会的には、中央政府が直接民衆を支配するのではなく、各地の「士」や秘密結社という中間団体が介在していたということだ。そしてこの体制は中華人民共和国の土地革命と管理通貨の実現でやっと解消されたとしている。
太平天国相手に活躍したのが湘軍・淮軍のような私有の軍隊であったことや、その後の軍閥割拠の状況を考えるとイメージしやすい。また、筆者は「袁世凱」(岩波新書)でも清の中央政府の弱さを述べている。あれだけ広い国土だから仕方なかったとは思うが。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
中国
- 感想投稿日 : 2016年5月28日
- 読了日 : 2016年5月28日
- 本棚登録日 : 2016年5月28日
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