フィリピンの戦地で餓死した記者、清六。親族の現役記者がその足跡をたどる。
岩手の農家に生まれ、早く両親を亡くすという境遇で、向学心を持ち勉学に励む。大新聞の非正規雇用から準社員となり、日中戦争では南京入城にも同行。正社員に登用されしばらく日本で取材するも、1944年にマニラ新聞社に出向となり、マニラ陥落後は軍と行動を共にし、軍内で新聞を発行し続ける。
この軌跡を、本人が書いた記事をはじめ手紙、周囲や同時代の人々の文章や証言、現地取材など多角的に見ていく。
特に著者の問題意識を感じるのは、南京では捕虜殺害を報じない、マニラでは日本軍の意向に沿った記事、など記者が戦争に加担することの意味だ。と言って清六を断罪もせず、自分だったらと自問する。記者魂のようなものには共感もする。報道の戦争責任を論じる本は少なくないが、渦中に最後まで身を置いた記者個人に、生い立ちも含めて焦点を当てるのは珍しく、引き込まれた。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
日本
- 感想投稿日 : 2021年8月8日
- 読了日 : 2021年8月8日
- 本棚登録日 : 2021年8月8日
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