海洋アジアvs.大陸アジア:日本の国家戦略を考える (セミナー・知を究める)

著者 :
  • ミネルヴァ書房 (2016年2月10日発売)
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感想 : 6

 セミナーが基なので読みやすい。書名の『海洋アジア vs. 大陸アジア』を直接示している箇所は見つけられなかった(島嶼部東南アジアと大陸部東南アジアの区別は出てくるが)が、前者は日米及び米国中心のシステム、後者は中国及び大陸部東南アジア諸国、ということだろう。ただし、本書で過度に両者の対立を煽っているとまでの印象は受けない。多層的に描いており、しかも軽々に断定的でもなく、知的好奇心を大いに掻き立てられた。
 米国については、オバマ政権での「リバランス」、関与とヘッジを述べている。
 中国については、2007年以降、南シナ海問題で対立する東南アジアの国々を日米豪印の側に追いやってしまったと述べると同時に、今後10~15年の間に中国自身が国家戦略上重要な決定をせざるを得ない一方で党国家の正統性危機、という中国内部の危うさも指摘している。
 そして東南アジアについては、専門家の著者だけあり、島嶼部と大陸部のみならず、うち6か国については各国別の近年の動向まで詳しく述べている。総じて言えば、中小国の集まりであり、ASEANを「てこ」に自らの立場を強めようとしている、と指摘している。
 そして日本の国家戦略としては、大国だが超大国ではないという自己認識の下、外交・安保では米国中心のシステムを基礎に力とバランシングの政治をする、対外経済政策では経済連携・自由貿易のルール作りに積極的に参加する、世界の金融秩序の進化に貢献する、言い換えれば「自由主義的国際秩序」と結論付けている。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 東南アジア
感想投稿日 : 2017年5月8日
読了日 : 2017年5月8日
本棚登録日 : 2017年5月8日

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