小繋事件―三代にわたる入会権紛争 (岩波新書 青版)

著者 :
  • 岩波書店 (1964年2月20日発売)
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感想 : 4

隣町であった出来事なのに誰も知らないのが不思議だ。私が初めてこの事件を知ったのは、旧奥州街道のウィーキングツアーが小繋で行われた時だった。

カシオペアFM「マッカさんのカシオペア探検隊」のマッカさんと一緒に歩き、「小繋事件」の立て看板に遭遇し衝撃を覚えた。

今度、一戸町でこの事件の映画が上映されるということで一気に興味がわき、早速図書館から借りてきた。

想像以上の悲惨さではあり、死人こそ出ないものの知恵の絞りようによっては何とかなったのではないかとさえ思う。
さらに戦後の昭和30年代だというのに被害者(訴えた方々)たちの尊厳があそこまで踏みにじられるってあり得るだろうか・・・。

最終局面ではイデオロギー闘争の感もあり、何だか少し前の原発誘致の様子に似ているなぁと思う。原発誘致の話題が勃発すると決まって村が分裂し悲惨な事態に発展する。それに非常に似ている。

最後の部分で著者は「山村の農民は、手と足を使って天産物を拾っていればよいという時代はもうすぎた。遅れた地帯の農民ほど、手足のほかに頭を使い、早くみずから生産の主人にならなければならない。農民が生産の主人になれず、それでいて農産物の国際競争にまでまきこまれたらどうなるか。私は恐れる ・・・(略)・・・」

という部分は、現代におけるTPP交渉そのものの話である。著者は50年前からその心配をしているあたりが面白い。この半世紀何も変わらなかった日本の農政を、今大いに反省すべき時ではないだろうか!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 事件・事象・記録
感想投稿日 : 2013年10月10日
読了日 : 2013年10月9日
本棚登録日 : 2013年10月10日

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