不可能性の時代 (岩波新書)

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本棚登録 : 679
レビュー : 70
著者 :
澤田拓也さん 哲学批評   読み終わった 

『社会学史』があまりに面白かったので、大澤さんの別の著作にも手を出してみた。

戦後日本を、理想の時代→虚構の時代→不可能性の時代、と遷移してきたと論じる。『虚構の時代の果て』で、オウム真理教事件を分析して、その時代の限界と終焉を論じた著作を継いで社会学的に現代を分析したものだという。

著者は、二つの少年犯罪を異なる時代の背景を反映したものとして、大きく取り上げる。一つが、永山則夫であり、もう一つが少年Aとして知られる神戸連続児童殺傷事件である。二つの少年事件の対照性を語り、時代の変遷を語る。この二つの少年殺人事件の類似と相違点が理想の時代と虚構の時代を分ける鍵となると結論づけるのである。

そして、宮崎勤による殺人事件を語り、オウム真理教の地下鉄サリン事件を虚構の時代の終わりと位置付ける。東氏や北田氏を引きながら、オタク文化や2ちゃんねるなどのアングラ文化を語り、美少女ゲームなどにも触れる。
しかしながらオタクについて「オタクという現象には、さまざまな逆説と謎が詰まっている。本章は、そうした謎を解いたわけではない。まずは、謎を謎として提起したのである」とすることで済ましてしまうのである。

そこに村上春樹の『羊をめぐる冒険』などを放り込んでくる。
「軽さ」、決して良い意味での軽さではない「軽さ」が前に出ている。

時代の考証を、神戸やオウム、宮崎勤などの個の事件によって語るやり方が自分が思う社会学的な姿勢ではないように思う。フーコーはそうではなかったし、本書で時代考証の素晴らしい実例として引かれたジョン・ダワーのやり方とも異なっている。

『社会学史』を読んで高まった期待に沿うものではなかった。残念。

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『社会学史』(大澤真幸)のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4062884496
『敗北を抱きしめて(上・下)』(ジョン・ダワー)のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4000244205
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4000244213

レビュー投稿日
2019年7月15日
読了日
2019年4月26日
本棚登録日
2019年4月27日
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