AI白書 2019

制作 : 独立行政法人情報処理推進機構AI白書編集委員会 
  • KADOKAWA (2018年12月11日発売)
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『AI白書』なので、現時点でのAIに関する技術概要とグローバルでの取り組みが記載されている。

ディープラーニングについてはかなり実装が進み、ツールもそろってきたという印象がある。ImageNetやWordNet、MNIST、word2vecなどオープンデータもそろってきているのかもしれない。語彙データやWebのLOD化(Linked Open Data)という話はおもしろい。AIは精度や暴走の防止が担保されていないことが問題にもなっていたが、そういったものも深層モデル化によって使えるようになるのかもしれない。ディープラーニングとは「シグモイド関数等の活性化関数を使って非線形性を入れ、多層に構成した関数を使った最小二乗法」という説明は正確ではないが、わかりにくいかもしれない。

ちょっと横道にそれた意識の話も面白い。グローバルワークスペース理論(GW理論・大局的作業空間理論) ... 意識は、無意識の中からフォーカスを選択され、他の知覚をマスクする、といった理論まで詳解されている、GAN(敵対的生成ネットワーク)が生物の行動と自己モニタリングに相当するのかもしれない。

AIの進歩として挙げられた次の線表はわかりやすくて、直感的にもそれくらいかなと思う。
・画像認識 → 医療診断 (2014)
・マルチモーダルな認識 → 防犯・監視・セキュリティ・マーケ (2015)
・ロボティックス → 自動運転・物流・農業・製造 (2016)
・インタラクション → 家事・介護・
・シンボルグラウンディング → 翻訳・海外向けEC・
・知識獲得 → 教育・秘書・ホワイトカラー支援
・対象のモデル化 → 経済・社会・研究支援 (2030)
・意識/自己 → 哲学・言語学・シンギュラリティ (20XX)

自動運転、人事などの社内システム、物流・小売りなどのサプライチェーン、スマート農業、スマートファクトリー、FinTech、などなどその影響は甚大ではある。ツールとして使いこなせるようになることがまずは必須だな。

この分野では、米国と中国が抜きんでている実態もわかった。GAFAM+IBMやBATなどの巨大テック企業と無数のベンチャが生態系を作っている。UC Berclayなどのアカデミアも存在感を見せている。特許と論文の数も米国と中国の寡占状態だ。大学の研究も同じ。それにしても日本の政府系のAIの取り組みは各省庁にまたがっていてわかりにくいな。

500ページもあり、覚えきれる量ではないけれども、ざっと見て知識を付けるのはよい本かもしれない。決して全文通しで見る本ではない。

『AI白書2017』が350ページだったので、『AI白書2021』が出たら何ページになるのだろう。編集委員の顔ぶれが変わっていないのは、ある程度一貫性を持たせるには今のところよいのでしょうね。


※最近では、SIPと言うとSession Initiation Protocolではなくて、Strategic Innovation Programの略の方が有名になっていくのかな。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 技術(通信以外)
感想投稿日 : 2019年1月21日
読了日 : 2019年1月20日
本棚登録日 : 2019年1月17日

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