未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社 (2017年6月14日発売)
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2015年発表の国勢調査で人口減が報告された。これから日本の人口は減少する。それは厳然たる事実である。人口動態ほど予測しやすい未来はないのである。本書は、人口減少がどのようにして起こるのか、それはどのような影響があるのかについて丁寧に解説する。

まず、自分がぎりぎり生きているかもしれない40年後に、2015年には1億2,700万人いた日本の総人口が9,000万人を下回るところまでいく可能性が高い。これだけではない。出生数の減少、高齢者の激増、勤労世代の激減、といった人口構成が激変した上で人口減少であることを理解しなくてはならない。これは介護離職の増加によってますます悪循環に陥り、無年金・低年金の高齢者が増え生活保護受給が増えることでますます勤労世代にかかる負担が重くなることも想定される。高齢者の高齢化、ひとり暮らしの高齢者世帯の増加、なども問題を深刻化させる。空き家や空きマンションの問題も顕在化する。

こういったことを予測した「人口減少カレンダー」に示されている。

例えば、
・2018年 75歳人口が「65歳~74歳」人口を上回る
・2020年 女性の過半数が50歳以上となり、出産可能な女性数が大きく減り始める
・2021年 団塊ジュニア世代が50代に突入し、介護離職が増え始める
・2024年 団塊世代がすべて75歳以上となり、社会保障費が大きく膨らみ始める
・2030年 団塊世代の高齢化で、東京郊外にもゴーストタウンが広がる
・2045年 東京都民の3人に1人が高齢者となる
・2050年 団塊ジュニア世代がすべて75歳以上となり、1億人を割り込む
など...


問われているのは、人口減少や高齢化に耐えうる社会の構築である。具体的で実行可能な施策と準備が必要なのである。特に今後問題になるのは都心部での高齢者数の増加である。実際には地方での高齢化”率”の上昇よりも大きな社会問題になる可能性がある。

著者はこういった高齢化の問題に対していくつかの提言を行っている。

1. 「高齢者」の削減 (高齢者を定義する年齢の変更)
2. 24時間社会からの脱却 (利便性の放棄)
3. 非居住エリアを明確化 (コンパクトシティ推進)
4. 都道府県を飛び地合併
5. 国際分業の徹底
6. 「巧の技」を活用
7. 国費学生制度で人材育成
8. 中高年の地方移住推進 (脱・東京一極)
9. セカンド市民制度を創設
10. 第三子以降に1,000万円給付

実現が非常に難しいものもあるだろう。いずれも個人のレベルで見ると少なくとも痛みを伴うものも少なくない。これで十分だとも言えないし、これが最善だとも言えない。それでも何かがなされるべきである。どちらかというとこれから高齢者と呼ばれる側に入っていこうとする立場からすると胃の中に何か重いものを感じるような議論である。


暗いよ。でも、その暗闇は多くの目で見つめられないといけない。この本はベストセラーにもなったという。少なくとも暗闇の方に多くの視線を向けることができたのではないのだろうか。もっと議論されてよい本。いずれにせよ、このテーマに関してはこれで十分に議論されたということにはならないのだから。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2017年12月31日
読了日 : 2017年8月16日
本棚登録日 : 2017年8月11日

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