ニュートリノ (イースト新書Q)

3.69
  • (4)
  • (12)
  • (9)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 87
レビュー : 11
著者 :
澤田拓也さん 科学   読み終わった 

多田将さんの書く科学解説本は優しい。たまにブルーバックスなどで見かけるのだが、より正しく書くことにこだわっている人が多い。多田さんはそうではなく、より正しく伝えることにこだわっている。そのことが十分に伝わってくる。ニュートリノについて書かれたこの本も、本来はひどく伝えるのが難しいものであったはずだ。それが多田さんの手にかかると不思議にすっとその内容が頭に入ってくる気がする (残念ながらその多くはすぐに抜けてしまいもするのだけれども...)。

ニュートリノに質量があるということが2015年の梶田さんのノーベル賞受賞とともにニュースになったが、本質的なことはニュートリノの種類が変わっていく、いわゆるニュートリノ振動が確認されたことであるということがよくわかる。そのニュートリノ振動理論も、3人の日本人、坂田昌一、牧二郎、中川昌美によって提唱され、さらにそれがカミオカンデの実験によって確認されたというのも素晴らしいことだと思う。そして、同じく日本人の小林・益川の両人によって発見されたCP対称性の破れをニュートリノでも確認しようとする実験が進行中だという。多田さんいわく「絶対に負けられない戦い」だとのこと。偏狭なナショナリズムとは違う誇りが感じられてとても素敵な感じがする。

多田さんも参加するカミオカンデのニュートリノ実験は、小柴さんと梶田さんの二人のノーベル賞受賞者を出している先端かつ成功した基礎研究プロジェクトである。小柴さんが超新星爆発によるニュートリノをぎりぎりのタイミングでとらえたのはパスカルの「Chance Favors the Prepared Mind」という言葉を思い出させるし、梶田さんがTVのインタビューで何の役に立つのかとの質問に「私には解らない」と答えたことはかつて米フェルミ研究所の初代所長ウィルソンが「国防には直接役立ちませんが、我が国を守るに値する国にするのに役立ちます」と答えたことを思い出させる。カミオカンデの業績は、ノーベル賞でよく報われたとはいえ、もっとよく知られてほしいな。

----
多田さんの他の著作のレビュー

『宇宙のはじまり』のレビュー
http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4781680038
『すごい宇宙講義』のレビュー
http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4781609910
『すごい実験』のレビュー
http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4781606245
『ミリタリーテクノロジーの物理学<核兵器>』のレビュー
http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4781680054

レビュー投稿日
2016年12月23日
読了日
2016年12月20日
本棚登録日
2016年12月20日
0
ツイートする
このエントリーをはてなブックマークに追加

『ニュートリノ (イースト新書Q)』のレビューをもっとみる

『ニュートリノ (イースト新書Q)』のレビューへのコメント

まだコメントはありません。

コメントをする場合は、ログインしてください。
ツイートする