フェイスブックの成功ストーリー自体が物語として滅法面白いというのがよく分かった。読んでいてずっとわくわくしていた。スタートアップ時のいくつかの騒動もしかり、バイアコム、ヤフー、マイクロソフト、グーグルなどの錚々たるビッグネームを絡めた売却を視野に入れた緊張感と莫大なお金のかかった交渉もしかり、そしてザッカーバーグの理想もしかり。もちろん、写真共有機能追加、ニュースフィードの導入、ビーコンの失敗、フェイスブックAPIの成功、などのフェイスブック自体の進化もひとつの物語を成している。
その中では小さなエピソードだが、ワシントン・ポストのCEOのドン・グレアムとの約束を反故にすることに耐えられず泣くザッカーバーグがなくシーンは印象に残り、どこか少しほっとさせる。
それにしてもこの本で描かれるシリコンバレー内の関係の濃密さは、そこが新しいことが生まれる場所だということを如実に示している。ペイパルの創業者ピーター・シール、ジンガの創業者マーク・ピンカス、果てはマーク・アンドリーセンも出てくる。今のCOOのサンドバーグもGoogleから引っ張った人物だ。YouTubeの創業者もFacebookで働いていた。特にナップスター創業者のショーン・パーカーがここまでフェイスブックの成長過程に影響を与えていたのは驚きだ。
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フェイスブックの成功の理由として、この本にも丁寧に描かれている初期のハーバードから始めて大学のキャンパスネットワークを順次広めていった戦略や、ザッカーバーグ自身の金儲けよりもまずはいいものを作って広げるという思想や、実名主義への拘りの徹底、などが挙げられる。
新しいエピソードとして、2011年に入りチュニジアやエジプトの反政府運動の広がりに影響を与えた件がある。その実名主義と築き上げられた莫大なソーシャルグラフから今後更に大きく重要な社会インフラとなる可能性もある。これからもこの本の続きが恐ろしいスピードで書かれていくのだろうな。
- 感想投稿日 : 2011年5月1日
- 読了日 : 2011年4月8日
- 本棚登録日 : 2011年5月1日
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