智恵子抄 (1956年) (新潮文庫)

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  • 1956年7月15日発売
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感想 : 3
4

あまりに切なく、静かで確かな愛に溢れている。
智恵子に惹かれる、智恵子に恋する、智恵子を愛する、光太郎の思いが、美しい言葉で並んでいる。

智恵子は完璧主義の妖精のような人だったのだと思った。
寡黙な人柄の中に創作への情熱(智恵子は絵を描く人だった)を秘めていた。
自然が大好きで、一生東京には馴染まなかった。
光太郎を愛し、愛したゆえに自分を殺した。
描くことを諦めたり、困窮する生活の中でなにか自分の大切な部分が蝕まれていくことに、本人は気づいていなかったように思う。
どんどん精神が崩壊していく。身体も悪くなる。
原因がわからないのにどんどん自分が壊れていく感覚はどんなに怖かったことだろう。
光太郎の膝で慟哭した、とあった。
そしてそれを見ているしかない光太郎の気持ちが、痛いほど感じられる。

しかし光太郎は、変わりゆく智恵子を生涯愛し続けた。そしてそれは死んでからも変わらない。

2人は、お互いがお互いに片想いし続けているようだ。
先日読んだ、星の王子さまに通ずる部分もあった。

こんなにも人はお互いを飽きもせずまっすぐに愛せるものなのか、と思った。

光太郎は智恵子が亡くなった後、戦争のため宮沢賢治の実家に疎開する。
そして、戦中に戦争支持の詩を多く作った自分を罰するため、戦後、岩手の山奥の小屋に自分を幽閉した。
ひとり、そこで何をし、何を思っていたのか。
今度岩手に帰ったら、記念館を訪ねてみたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年2月27日
読了日 : 2017年2月27日
本棚登録日 : 2017年2月27日

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