ケガレの民俗誌

  • 筑摩書房 (2010年12月1日発売)
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感想 : 10
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民俗学をなぜ今学ぶのか、納得できる一冊。

副題で「差別の文化的要因」と書いてある通り、今なお存在する差別(人によっては差別とすら思っていないかもしれない)がどのようにして発生、変遷しながら現在に至るのかの考察を丁寧に行っている。

性差別の原理の部では、「ケガレ」という言葉の意味がもともと何を表すものなのかを分析、考察しながら「女性はけがれている」とは本来どうして発生したかアプローチを試みている。すると現在神社の行事や相撲などでみられる女性忌避は「本当にこれは「伝統」なのだろうか」という疑問がわく。
汚いとか、現在の意味での穢らわしいという意味ではなかったと推察されるからだ。

食肉の忌避や皮剥ぎ、エタ・ヒニン間の信仰など、現在根強く残る差別問題を取り組むにあたって、当時の文化的背景や発生原初について学ぶことの重要性を実感できた。

また、創作の元になるような民話、奇祭独特の信仰や習俗にはそのウチのものだけが知る隔絶された歴史があるかもしれないと思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 民俗学
感想投稿日 : 2022年7月23日
読了日 : 2022年7月21日
本棚登録日 : 2022年7月21日

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