短編集。全15話。
エスプリに富んだ話あり。人生の機微に触れる話あり。様々な趣向の話があるんだけど、どれもウィットに富んでて、私の好きな阿刀田節が炸裂でした。
リアルなんだけど、シュールでもある。フィクションなんだけど、実際にありそうな感じ。そういうのをすごくうまく描くんだよね、阿刀田さんって。
特に好きだったのは、『香水』、『彫像』、『目撃者』、『蟹』かな。
『香水』は、淡い恋の期待が、思わぬ形で敗れてしまうんだけど、それがちょっと笑ってしまうオチ。単純なハッピーエンドじゃなくて、シニカルに落とすところが阿刀田さんらしい。
『彫像』は、卑近な話で、リアル。これも思わず苦笑してしまう。
『目撃者』は、いまいちぱっとしない同僚が、自分はもてると吹聴している。他の人はそれを信じない。信じさせようとした同僚は、主人公を証人にするため、ガールフレンドたちをさりげなく紹介する。
オチがなんとも皮肉でいい。確かにモテている同僚。しかし、その相手はみんなイマイチ。そして主人公は最後にこう思う。「あんな女たちにならモテなくてもいいかなぁ」と。
前にもこういった主旨の記述を読んだ気がするから、阿刀田さん自身のモテ観なのかも。これって、僻みにも聞こえるけど、本音のようにも感じる。なんともおもしろいオチ。
『蟹』は、ちょっぴり怖いお話。はっきりと言わずに余韻を残すところが、なお恐怖心をあおる。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
阿刀田高
- 感想投稿日 : 2007年2月17日
- 読了日 : 2007年2月17日
- 本棚登録日 : 2007年2月17日
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