独特の形式から普通の小説の形式になった事もあり、読み始めは「『悪童日記』ほどの衝撃は無いかな」などと思ったのだが、全くそんな事はなく。子供の母ヤスミーヌの行方の真相、また双子(リュカとクラウス)の存在とは結局何だったのかと謎に包まれるラスト。
「悪童日記」でも、一筋縄ではいかないいくつもの「愛」が描かれていたが、本作もまた「愛」とは何なのか考えずにはいられない。
愛と執着と依存。私には何だかもう線引きは出来ない。世間での認識として「愛だけが相手を幸せにする」=「幸せにしてあげられなければ愛ではない」なら、この本に描かれているいくつもの関係はほとんどが愛ではないという事になるだろうが、私にはどうしてもそうは思えない。
時に冷酷に思えるほど誠実である主人公リュカの言葉「ぼくに感謝なんてしないでください、ぼくの内には、どんな愛も、どんな思いやりもありはしないんです」。リュカはずっと自分の胸の内にあるものを「これは愛では無い」と思いながら生きていたのだろうし、実際、血の繋がらない不幸な子供マティアスへの感情は執着や依存の形をとって描かれている。でも本当にそうなのか。
答えは出そうにない。
次の「第三の嘘」で双子の心の謎に迫れるのかどうかわからないが、とにかく読みたい。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2015年1月16日
- 読了日 : 2015年1月16日
- 本棚登録日 : 2015年1月16日
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