世界の始まりや成り立ちを語る昔語り。
サーメ人という、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド北部、ロシアの西北部あたりでトナカイの遊牧をしていた先住民族の伝える物語。
青い胸のコマドリが、夜を司るカーモスに対して、昼のツォブガに助けを求めて、昼をつれてきてしまう話とか。
白夜と極夜なんですよ。
これは日本に育って、天体の運行の話とか知らずに聞いたら、なんじゃそら。って話だったんだろうなあ。
北極圏の生活なので、北極の夏に花が一気に咲き乱れるうつくしさが語られていたり、トナカイがあちこちで出てきもする。
オーロラの起源の話もうつくしかった。
ひとりの娘を争って、ふたりの若者がそれぞれ、市場で布を見つけて持ってくる。
早春の雪の結晶のようにきらきらかがやく布。
冬の夜のたき火の炎のように赤、黄、青にかがやく布。
虹の七色。紅葉の赤、ゆるやかに流れる大きな川の青、夏の草原の緑、キンポウゲの黄色……
なんて美しい表現なんだろう。
この布をそれぞれ手に入れるんだけど、相手の布に呪いをかけて、白樺の皮にしたり、苔にしちゃったり。
セイタっていう岩の神に捧げ物をしてその呪いを教わるんだけど、セイタもあとで
「欲に目がくらんでしまった」
って反省する。
最終的に、オウラとアスラクのふたりは争って、布をひっつかんでもめる……と、怒った神に飛ばされて、布は天にかかってオーロラになりました。
文中に「セイタはときたま、このような過ちをおかします」
なんて書かれていて、完全ではないものを、そのままにおいていること。
青いオオシカを追いかけて、天にまで行ってしまった若者の話でも
「シカの魔法のおかげでさびしくありません。いつか時の流れが止まり、宇宙のふたがひっくり返されるとき、モルテンは解き放たれ、スターロの青い大シカのことを忘れて、もどってくるはずです。なぜならこの世界で永遠に続くものなどないからです。青い大シカの追跡だって同じです。」
達観。
そのまま、という視点と、不変のものなどない、という民族の物の見方と。
定住しない人びとだから持ちえた物語なんだろうなあ。
- 感想投稿日 : 2009年11月26日
- 読了日 : 2009年11月26日
- 本棚登録日 : 2009年11月26日
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