潤一郎ラビリンス 8 (中公文庫 た 30-36)

著者 :
制作 : 千葉俊二 
  • 中央公論新社 (1998年12月18日発売)
3.54
  • (4)
  • (5)
  • (15)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 94
感想 : 7
4

監禁文学を集めた短編集。地元の図書館で借りてきた。谷崎潤一郎の作品も収録されている。
ちくま文庫はよくやってくれた。良い仕事をしている。
もう絶版なのが残念でならない。

そして、この本に収録されている宇能鴻一の「ズロース挽歌」が逸脱である。すばらしい。
ググってみたところ、三島幸夫が死んでから官能作家に転身したらしい。
純文学はもう書かないのか……。宇能氏の本は、これまたほとんどが絶版になっている。図書館に行けば出会えるかもしれない。
まぁ「ズロース挽歌」自体は純文学としてはかなりイロモノではあるだろう。それにしても、すごく良い。あんなセンスはなかなか持ち合わせていない。
五感に訴える感じで女学生に対するフェティズムを語ってくるのが何とも生々しく素晴らしい。
簡単に言えば、この中編小説は「ズロースを履いた女学生」フェチの余命幾許も無いおっさんが学生時代を思い出して、女学生を追い求めてハァハァする話である。女子大生でも女子学生でもないのがポイント。
しかしメインストーリーとは別の前半の学生時代の話もすばらしい。メインストーリーは有名な女子高生誘拐事件が元ネタになってるらしいが。
日本が民主主義化し、男女共学となった時代を、語り手は学生時代として過ごしている。男子校と女子校が合併する際に、女学生の椅子を運んだりするわけだが、さりげなく匂いを嗅ごうとしてみたり、実際に学校生活が始まってからは、女学生が座る椅子を見て「あの椅子になりたい」などと思ったりする。女学生が椅子に座る時、スカートをふわっとめくって座るわけだが(※今もプリーツスカートの学生さんはするよね)そう考えると、女学生の尻と椅子の間にはズロース(※当時はパンツではない)一枚しかないわけだ。大変だ。……というようなことが大真面目に書かれている。
これを読んでピンと来た方、一度でも「変態」と呼ばれたことのある方や、健全な男子諸君は、是非図書館で探してみてほしい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2010年1月30日
読了日 : 2010年1月16日
本棚登録日 : 2010年1月16日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする