東京番外地

著者 :
  • 新潮社 (2006年11月16日発売)
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本棚登録 : 83
感想 : 15
4

まず最初に、どのカテゴリに該当するか迷った。
ノンフィクションと言うには大袈裟なような気がし、
紀行というほどライトではないと思ったからだ。

著者が東京の色々な場所を訪れ、
その地に滞留する空気や、その奥にあるものなどを独自の視点で綴っている。
その内容が他の紀行と異なり、
ノンフィクションの要素が加わっていると感じたのである。

最初に著者を知ったのは、ドキュメンタリー映画「A」である。
オウム真理教の信者の日常を追ったものだ。
この映画で、物事を一面的に捉える危険性を改めて感じた。

映画、本いずれも、
重要な問題提起をしているのだが、
彼の意図することや伝えたいことを受け手に委ねているのが、
彼の手法であり特徴であると思う。
特に、映画「A」では個人的感情は排除し、
淡々と事実をカメラに収めている
(穿った見方をすれば、それが演出なのかもしれないが)。
本書でも、彼自身の考えや思いを述べているものの、
そこに強引な押しつけはない。

本文の
「世の中には、考えてもわからないことはたくさんある。
結論がどうしても見つからないこともたくさんある」
と言う彼の言葉にもそれは表れているのではないだろうか。
それは、諦めではない。
その考えを前提に物事を捉えると、
より大きな視野、より大きな心を持て、
現実だけではなく、その裏にある真理に思い至るのではないか。

以上の感想は、いささか大袈裟な感はあるが、
ためになる本ではあると思う。
凝り固まった「自分の中の常識や無意識」を多少なりとも
ほぐしてくれるそんな一冊だ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2009年3月25日
読了日 : 2009年3月25日
本棚登録日 : 2009年3月25日

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