彼岸過迄 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1952年1月22日発売)
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本棚登録 : 1830
感想 : 136
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【何気なき,由々しき事事】定職に就かず,何か心に面白きことはないかと日がな考えながら過ごす敬太郎。そんな男の元に現れては去っていく人々の語るところから,世の中を透かし見て得るに至った思いを著した小説作品です。著者は,日本近代を代表する作家の夏目漱石。

いくつかのエピソードと言っても良い話が収められているのですが,自分が特に興味深く読んだのは「須永の話」。煎じ詰めれば男女の恋仲の話なのですが,須永という人物が女性に叶わぬ恋をしているのではなく,叶わない恋に苛まれている自分を恋しく思っているのではないかと穿って(?)読み取ってしまいました。

〜要するに人世に対して彼の有する最近の知識感情は悉く鼓膜の働らきから来ている。森本に始まって松本に終る幾席からの長話は,最初広く薄く彼を動かしつつ漸々深く狭く彼を動かすに至って突如として已んだ。けれども彼は遂にその中に這入れなかったのである。其所が彼に物足らない所で,同時に彼の仕合せな所である。〜

久しく手にとっていなかった間に小説の読み方が自分の中でずいぶんと変化しているような☆5つ

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2018年9月17日
読了日 : -
本棚登録日 : 2018年9月17日

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