[瓦解の日々に]1945年8月15日前後の韓国や台湾、中国などでの情勢をつぶさに観察することにより、かつて実在した「大日本帝国」がいかに崩壊し、それが日本人のメンタリティにどのような影響をもたらしたのかを研究した作品。「内地」の歴史だけからは知り得ない、大きな、そして異なる文脈での戦時・戦後史が浮かび上がる良書です。著者は、日本近現代史を専攻し、近著には『1945年の歴史認識』などがある加藤聖文。
力作。「アジア」という、いわば大世界的な文脈から先の大戦を振り返るという作品はいくつか見たことがあったのですが、本作のように、国や地域といった小世界的な文脈をいくつか並列させることにより、日本の敗戦と帝国の崩壊が、多様な物語をつくりあげたことを簡潔にまとめた作品は非常にめずらしいのではないでしょうか。それだけでも読む価値が十二分にあるように思います。
また、なぜこのような多様な歴史の見方が日本の中から消えてしまったのか、という本書が投げかける問いも、極めて今日的かつ有意義なものだと感じました。大日本帝国の崩壊を通して歴史を語ることの難しさを痛感させられることにもなりましたが、それも含めて良い読書経験を本書は提供してくれました。
〜八月十五日の玉音放送は、大日本帝国を構成していた日本とそれ以外の地域とを実態においても意識においても切り離すことになったという意味で、歴史的に重要な分岐点となったのである。〜
得るところの多い一冊でした☆5つ
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2015年8月14日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2015年8月14日
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