[崇高なりし興亡]インカ帝国の興りから滅亡までを描いた作品。実際の記録を丹念に読み解くとともに、ときに想像力を羽ばたかせながら、在りし日の帝国の面影への近接を試みています。著者は、東京大学の名誉教授も務められ、中南米を旅したときの衝撃が研究を後押ししたと語る増田義郎。
旅番組などでマチュピチュが特集されているのを見たことがあるといった程度の知識量だったのですが、本書は建国神話にまで立ち入りながらインカの歴史の流れを説明してくれており、非常に興味深く読むことができました。また、無味乾燥な事実記述型の文章でもないため、読者の側も想像力をたくましくしながらインカの栄光を後追いできるところが魅力的です。
また、冷酷無比な侵略者としてのイメージが強いピサロに、倫理観とはかけ離れた視点からの評価を投げかけているところも新鮮でした。インカ帝国側にも(当然と言えば当然なのですが)様々な問題が存在していたことを記述するなど、全体としてバランスのとれた作品になっていると思います。
〜ひとはウルバンバ、ビルカバンバの地に足を一歩ふみ入れた瞬間に、宝のことなど、どうでもよくなってしまうほど大きな、あるひとつの魅力に取りつかれるだろう。その魅力とは、ひとつの偉大な帝国を独力でつくりあげ、そこにうみだしたよきものを、侵略者の手から守るため、数十年の長きにわたって、千仞の谷間のけわしい峰々の奥に、生活と信仰の本拠をきずきあげ、独立心と自負心をすてなかった高貴な民族のたましいのかおりである。〜
中南米…...行きたいけど遠いなぁ☆5つ
- 感想投稿日 : 2014年11月3日
- 読了日 : 2014年11月3日
- 本棚登録日 : 2014年11月3日
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