木瓜の花 (新潮文庫)

  • 新潮社 (1981年1月1日発売)
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年をとるのは、怖くない。若いだけが価値ではない。そう思っていた。
有吉佐和子は女性の一番美しいところを、余す所無く匂うように描くが、きれいなところだけではなく見たくない面も鋭く見通して隠さず描いてしまうのが好き。そう思っていた。
しかし「木瓜の花」はまるでホラーだ。老いて素敵な女性はたくさんいる。経験による心の深さを得た女性、それは「こういうふうに年を取りたい」という目標である。しかし、「老い」という容赦ない自然現象を前に直面する現実を見せつけられた。主人公は幼い頃からの1つ年上の友人の裸体を見て自分の老いを残酷に痛感する。禿、肌、毛の色素・・・。読者としては「芝桜」のテンポのある成長と比較してくどくどと続く過去の回想、必ず結びつけて語られる若い頃の恋との比較、そういった語り口からも、煌びやかだった主人公たちが容赦なく「おばさん」と呼ばれるのを客観的に見るところにも、「老い」をリアルに残酷に感じる。
そんな重苦しい中、芝桜をいっぱいにした可愛い少女が、老いて美しい名前のとりどりの木瓜の盆栽を丹精込めて作っている姿に救われ、相変わらず私の好きな女性として心に留まるのである。

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感想投稿日 : 2006年12月3日
本棚登録日 : 2006年12月3日

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