無銭優雅 (幻冬舎文庫)

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本棚登録 : 1086
レビュー : 109
著者 :
shinyataguchiさん 小説   読み終わった 

大人の恋愛小説。
何が大人か、と言うと主人公の年齢が、ということではなくて、
語り手としての主人公の「軽やかさ」が大人なのである。
歳を経て、経験を重ね、己を知り、恋を知り、人生を知り得たからこその、達観したかのようなこの「軽やかさ」。
そこに、「大人の余裕」を感じるのである。

「だって、感動的な恋愛小説って、大体どっちか死ぬだろ?」
「感動的な恋愛小説って、たとえば、この間、映画になったみたいなの?」

凡百の恋愛小説へのアンチテーゼみたいなこの台詞こそが、この小説の行先を暗示して、その方向へと読者を力強く牽引していることは言うまでもない。
けれどその途中に差し挟まれる幾つもの引用句が、軽やかなリズムをあえて乱して読む手を止まらせる。しかもその引用句は、次第に「死」の雰囲気を帯びていく。
解説によれば、それらは全て物語の陰で慈雨が読んだ恋愛小説たち(一部除く)であり、そのすべてに「死」という装置が組み込まれているのだという。

これは凡百の恋愛小説へのアンチテーゼと読むべきなのか。
それとも、全ての恋愛小説へのオマージュと読むべきなのか。

いずれにせよこの小説は、この世に幾百、幾千、幾万とある恋愛小説とはちょっと違う。
数多の小説たちとは居並ぼうともせず、それらを遥か高みから見下ろしている。
そんな小説である。

レビュー投稿日
2013年12月16日
読了日
2013年12月16日
本棚登録日
2013年12月16日
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